第5話 家族との時間 ページ9
☽.*·̩͙
「ただいま〜。」
家に入ると、棚の上をはたきで掃除をしている母さんと、なぜか歌いながら踊っている父さんがいた。
「まあ、おかえり。変なことされなかった？」
「はは、変なことってなんだい？聖痕の確認をしてもらっただけだよ。」
「リアムおかえり〜。ふっ！ふっ！」
「...うん、ただいま。」
うーん、様子がおかしい。
父さんがキレよく踊ることなんてまず無い。
踊るとしても緩い動きだ。
...そもそも何で踊っているの？
そして母さんも小さな違和感だけれども、うん。
はたきを右手で持っているのが、違和感だな。
母さんは左利きだから、右を使うことはあんまりしないのに。
「やっぱり、僕が神子になったの、驚いた？」
そう聞くと2人の動きが止まった。
「...はぁ、リアムは観察眼が鋭いわね。さすが私の息子よ。」
「...うん、驚いたよ〜。世界を救っちゃうんでしょ〜？かっこいいよね〜！」
父さんの言葉に少し笑ってしまった。
かっこいい、かっこいいよなぁ。
「...僕に、そんな力があるのかな。」
「『奇跡』という、神子にしか扱えない魔法があるわ。貴方にはその力があるのよ。」
『奇跡』...か。
回復や攻撃もできる、光属性の魔法だっけ？
「魔法も上手く使えない僕が？」
「やってみる〜？俺は足に切り傷があるから、検証してみよっか〜！」
父さんの怪我なら薬で大丈夫なんだけど...。
確かに試してみたい気持ちもある。
奇跡が起きる期待と、起きなかったらどうしようという大きな緊張感を抱えながら、父さんの怪我に手を当てる。
「んん...んーっ！」
「...何も起きてない...ん？」
「わ、起きてるよ！微かながら怪我が治ってきてる！頑張れリアム！」
声援を糧に、もう少し力を入れてみる。
正直力を入れても特に変化はないのだけれど...気持ち的に...！
「...まぁ！傷が治ったわ！流石リアム、貴方は神子様よ〜！」
「ご、ごめん...ちょっと疲れちゃった...。」
力みすぎたせいか、僕の才能が無いからか、こんな小さな怪我で随分と疲れてしまった。
これなら薬で治した方が全然いいのでは...？
「わ〜、リアムごめんね〜！大変だったよね〜。そうだ、お昼ご飯食べよっか〜。」
「うん、あ、そうだ。エリオット様のお話がしたいな、僕。」
続く
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作者名：ホッケ | 作成日時：2020年7月9日 4時
