放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ10)

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145:見送る背中ページ10

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智「ごめん、もういいわかったから」

「わかってない、全然わかってないっ」

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大野君のグレーのTシャツに、私の涙が滲んでいく。

強くつかんだその襟元に、黒いシミが広がっていく。

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「私が、どれだけ・・・」

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大野君を好きか、きっと永遠に伝えられない。

だからこのまま、オワリにさせて。

通り雨のようなひと夏の恋だったと、そう思わせて。

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智「ごめん・・・センセに好きって言ってもらえたらそれで俺はいいよ」

「そんなの・・・」

智「それ以上無理って言うなら、仕方ねぇじゃんか」

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「好きって・・・言いたかったよ」

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何度心で思ったろう。

大野君にそう伝えられたらと、何度思ったろう。

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「でもっ、一度でも一回でも好きって言ったら」

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「もっと好きになるからっ・・・言えな、くて・・・」

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オワリしかみえない恋と知っていたから、失うその一歩手前で

好きを閉じ込めた。

好きだと思うことと、伝えることはまるで別物のように心を締め付けた。

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”ごめんね・・・”

最後にそう言った私をまた抱きしめて

智「・・・ごめん。センセ、ごめん」

こめかみに触れた唇からそう何度も聞こえた。

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智「・・・でも、やっぱ俺は」

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しばらくそのまま抱き合ってから聞こえた声に、体を離す。

そっと見上げた大野君の瞳が、潤んでいた。

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智「ずっと待ってるよ」

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「大野君・・・」

智「つーか・・・勝手に待ちてぇだけだから(笑)」

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そう笑って。

”なんか目がかいぃな”そう言って潤んだ瞳をこすった。

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帰りの車内、突然大野君はしりとりを始めた。

言い出したくせに大野君はすぐ負けて、何度も何度も繰り返した。

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私が笑うまで、何度も何度も繰り返した。

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送ると言ったのに、女に送られるなんてさいてぇだ、と。

私のマンションの前で、じゃぁねと手を振って歩いていく。

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少し丸めた背中、右手に持ったバッグ。

つぶしたスニーカーで引きずるように歩く足、揺れる金色の髪。

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その背中は、あの日の放課後のようだった。

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