放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ9)

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144:未来ページ9

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左手を頬に残したまま、右手でゆっくりと大野君の前髪に触れた。

ゆっくりと柔らかな金色の髪を、指で梳くように撫でる。

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「どうして、生徒なの・・・」

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涙がまた一粒頬をつたう。

大野君の頭を、震える両手で引き寄せた。

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「どうして、私は・・・先生なのっ・・・」

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抱きしめてもらって感じる幸せを

今

抱きしめることでも感じられると

知る。

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「彼と、も・・・だめかもしれない」

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必死に出そうとしても、出るのは掠れた小さな声。

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「でも、だからって大野君とどうこうなるとか・・・それは」

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顔をあげようとする大野君の頭を肩に強く抱き寄せる。

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智「セン・・セ・・・」

「それは、できないっ・・・わかって・・・」

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一瞬力が抜けた私の体を、しっかりと今度は大野君が抱きしめる。

震えるような吐息が、耳元で聞こえた。

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智「どしても？」

「・・・どうしても」

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失うものしかない未来は

私だけならいくらだって受け入れる。

でも、大野君にまでそんな未来を背負わせることはできない。

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ゆっくり私の髪を指で梳く。

儚げに息をしながら。

私の呼吸に合わせて、ゆっくりと。

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それから

体を離して私の両手を握ってから

うつむいていた顔をまっすぐ私に向けて

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智「これだけ、聞かして」

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掠れた声で言った。

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黙ったまま、その言葉を待った。

優しくて、愛おしくて、切なさの残るその瞳を黙って見つめ返した。

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智「俺のこと、好き？」

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手のひらに残る錆が、強く握られてまた突き刺さる。

ぼんやりとしたその痛みに、答えが迷う。

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智「誰にも言わねぇから、教えて・・」

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”センセ、俺のこと好き？”

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ガラスのような声で響く言葉に、心がもう限界だと震えた。

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「・・・・・好き」

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「ずっと・・・ずっとっ・・・好きだった・・・」

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その声も、瞳も、握る手も、指も・・・全部

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「好きなの・・に・・・っ」

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