放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ8)

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143:最初の恋ページ8

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ぎゅぅっと息を止めたまま私をしばらく抱きしめて

それからふぅーっと長く長い息を吐く。

それを背中で聞いていた。

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智「・・・俺のせい？」

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ゆっくり体を離した大野君が、私の頬にはりついた髪をなおす。

涙がたどった跡をそっと指でなぞった。

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智「俺のせいで泣いてんなら・・・」

「うぅん・・・違うの」

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翔となら

翔なら。

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心の奥に巣食ったままの、闇から救い出してもらえると思った。

お日様のような笑顔で私を見つめて好きだと言ってくれた。

この人なら、この人の行く場所ならきっと幸せになれるとそう思った。

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智「泣きたいときはいくらだって泣いていいけどさ・・・

でも、俺のせいで泣かせんのはやだよ」

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でもそれは、本当に自分が願う場所じゃなかったんだと気づく。

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連れ出してほしいんじゃない

救い出してほしいんじゃない

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ただ隣にいて

ただ寄り添ってほしい

何も言葉もいらない

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ただそばにいてくれたら

それだけで、良かった。

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そして・・・

その想いを本当に伝えたい人は、誰かを知った。

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「大野君・・・」

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ゆっくりとあけた瞳が、目の前の愛しい人をみつけて揺れる。

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何度か恋をした。

胸がときめいて、その人のことを思うと心が震える恋をした。

だけど、その過去全てがまるで幻のように感じる。

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「私のこと・・・好き？」

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少し驚いた大野君の瞳に、私が小さく映る。

その顔をそっと両手で包んで、もう一度聞いた。

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「私のこと、好き？」

智「・・・好きだよ。言ったじゃんか」

「ちゃんと、お願い。もう一回私の目を見て言って・・・」

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智「・・・好きだよ」

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きっとこれが

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智「好きだよ、センセ」

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私の、最初の恋。

手を伸ばせば届くそこで、甘く煌めいて私を呼んでいた。

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