放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ31)

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166:苛立ちページ31

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向かいの校舎から、吹奏楽部の子たちの練習する音が響く。

管楽器の音合わせが好きで、立ち止まって耳を澄ました。

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窓の外に見える金木犀は、昨夜の雨でその花をほとんど地に落としていた。

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電話は、鳴らなかった。

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後ろで私にさようならを言う生徒の声が聞こえて、振り返って手を振る。

その顔を前に戻した時、廊下の端の階段から

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大野君が下りてくるのが見えた。

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ペットボトルのお茶を上を向いて飲みながら、こっちへ歩いてくる。

今更逃げも隠れもできなくて、その場に立ち尽くしたまま大野君を待った。

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「今日は、ひとり？」

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声が届く距離で、震えそうな声を必死におちつかせて声をかけた。

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いつも一緒にいる相葉君が、隣にいなかったから・・・。

でも言った私の言葉に、黙り込んだ大野君をみて”昨日”を思い出した。

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智「嫌味で言ってんの？」

「・・・いや、いつもはほら相＿」

智「自分のこと好きだっつった俺が、女とカラオケ行ったのがむかつく？」

「そんなこと言ってないでしょ・・・」

智「じゃぁどういう意味だよ」

「私はただ・・・」

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ただ、普通に会話がしたくて。

避けて、逃げてばかりの自分がいやだから

少しでも前みたいに、笑って話せるようになれたらと

そう・・・思って・・・。

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大野君の金色の髪が、私への苛立ちでゆらゆら揺れてるようだった。

上手く言おうとしても言えない気持ちが散らばった心の中は

声にできない言葉ばかりで泣きそうだった。

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