放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ30)

今日:21 hit、昨日:1 hit、合計:361,612 hit

165:夜更けの電話　ニノSide ページ30

・

・

二「まぁ言ってる意味はそうなんだろうけど、今だけの気持ちかもってことだろ？
盛り上がりが覚めたら、どうなんのかっていうね」

「だから、今は無理だと言ったの。少し時間を置いてみれば冷めるんじゃないかって」

二「ところが自分の想いは全然冷めるどころか、燃えあがってるっつーね」

「がんばれると思ったのに・・・どうしてこんな・・・
もう自分で自分が嫌になる」

二「だから、好きなんだからだろって(笑)」

・

・

”何度も言わなくてもわかってる”

拗ねたように言いながら、こめかみにそっと手をあてた。

・

・

二「大野と、あれからゆっくり話したりした？」

・

・

横に揺れる頭。

・

・

・

「でも、電話は・・・時々くる」

二「話してんじゃん」

「うぅん、ワンギリだけ」

・

・

理解できない俺を少し笑ってから、両手をぎゅっと握って話し出した。

・

・

・

・

雨の夜は、必ず、電話が鳴ること。

小雨だろうと必ず、夜更けに1度、鳴ることを。

俺はここにいるから、そう言ってくれてるようで
安心できて嬉しいと、目を閉じたまま言った。

・

・

・

きっとどんなに寂しくても辛くても、こいつが電話にでることはない。

かける大野も、それはわかってる。

・

・

・

繋がれない2人を、唯一繋ぐのが雨って・・・切ないにもほどがあんだろ。

・

・

・

・

「ずっと雨が嫌いだった。本当に苦手だったの・・・だけど。
今は、辛い記憶より大野君の記憶ばかりで。

・・・違う意味で辛い(笑)」

・

・

・

ここへ来る途中覗いた空は、どんより重たい雲が覆い始めていた。

・

・

・

きっと今夜は、雨だ。

・

・

・

二「卒業まで頑張るか」

「ね・・・がんばらなきゃ」

二「まぁいつでも話ならさ、俺でも静先生でも聞くし？
あ、松本はやめとけよ。あいつ面倒くせぇの話が(笑)」

「面倒くせぇって(笑)・・・でもありがと」

・

・

・

この俺が、人の恋でこんな胸痛くすることに自分が一番驚いていた。

なんかこう心の隅っこがきりきりするような・・・

そう、切なさってやつの相手に四苦八苦してるなんてね。

・

・

・

冷めきったコーヒーの残りを、二人ため息と一緒に流し込む。

・

次に立ち上がった時の彼女はもう

”A先生”の顔で、帰り支度を始めた。

・