放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ28)

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163:女心　亜子Side ページ28

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また歩き出してすぐ、立ち止まって雅紀がこっちを見る。

やだやだやだ、って思いがもくもく黒い煙みたく心に広がって

その苦しさに、んって息を止めたら涙が出てきた。

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雅「ん、どした？」

亜「・・・亜子なんか、って言わないで」

雅「え・・・？」

亜「亜子なんか・・でも、雅紀のこと助けられたらって思っただけじゃんっ・・」

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本当は大ﾁｬﾝを助けたいんじゃないよ

もちろん助けたい、けど

それよりも、そのことで悩んでる雅紀を助けたいんじゃん

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雅「えっ、ちょ、待って待って。なんで泣くんだよ」

亜「あだっ・・し、カラオケ行かないっ」

雅「ええ？ねぇなんだよ、なんかやばかった？なぁ、亜子ごめんって。ね？」

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あたしが泣くと、雅紀はすぐごめんっていう。

自分が悪くなくても、すぐごめんっていう。

だから、あたしはいつもごめんが言えなくなるんだよ？

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ねぇ知ってた？

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亜「何がごめんかもわかんなっ・・いくせにっ・・！

もうやだ・・・雅紀なんか嫌いっ！」

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おいって呼ぶ声したけど無視したまま、走って走って走った。

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音楽準備室に飛び込んで、びっくりしてる静先生に

ピアノの練習させてくださいって泣きながら言って

そのまま部屋にこもって、鍵をかけた。

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不在通知を見たら、やっぱり雅紀ばかりだった。

・・・でも今はまだ会いたくない。

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A先生、いるかな・・・

ふと思い出す。

頭ちょっと痛いし。

先生に・・・話聞いてもらおっかな。

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もうほとんど人のいなくなった廊下をそっと歩いて保健室に向かう。

近づくとコーヒーの香りがして、もしかしたらおこぼれもらえるかなって期待する。

なのに、扉のボードは帰宅になっててあれ？って扉に手をかけようとした

その時だった。

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A先生が泣きながら話す声と

ニノﾁｬﾝのびっくりするほど甘く優しい声に

石になったあたしはそのまま、動けなくなった。

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