放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ20)

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155:元カレページ20

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時間は、ぼんやりとした私を置きざりにして流れていく。

行事ごとで慌ただしい日々を送る間に、季節はすっかり秋だった。

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届いた薬品類の箱を、両手に抱えて歩くある日の放課後。

階段を登る手前で呼ばれた声に足を止めた。

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翔「一度に三箱は無理だろ(笑)」

持ち上げられた箱の向こうに、翔の笑う顔が見えて

「往復するのが面倒くさくて(笑)」

その笑顔につられて、自然と笑顔で答えた。

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翔「なら、誰かに手伝わせればいいのに。ふらふらして階段落っこちるよそれじゃ」

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手にしていたバインダーを脇にはさんで、私の手から全部の箱を奪う。

でも、結局前が見えないことに気付いて困ったように笑ってこっちを見た。

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「ふふ、一度に三箱は無理って櫻井先生が言ったのに(笑)
だから、一箱は自分で持ちます」

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ごめんと笑って答えるジャージ姿の翔に続いて、私も階段を上がりはじめた。

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「これから部活・・・ですか？」

翔「そっ。他校と交流試合あるからやつら張り切ってて」

「櫻井先生も張り切り過ぎて、怪我しないでくださいね(笑)」

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踊り場の窓からさす西日に、目を細めながらそう言うと

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翔「もう、普通の話し方でいいよ」

ゆっくりとした足取りに変えた翔が、振り向かずに言った。

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「いい、の？」

翔「別にもう何もないし・・・今更だけどさ。
何を必死になってたんだろうって」

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首の後ろ側にまわしたホイッスルが、振り子のように揺れている。

翔の吹き方は特徴があって、短く軽やかにピッと吹く。

だから姿は見えなくても、グラウンドから聞こえる音だけで
そこに翔がいるといつもわかった。

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翔「二宮とか松本とはフランクに話してんじゃん？
あれ、実はうらやましかった(笑)」

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”だからこれからはそうしよ”

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ちらっと見えた横顔。

口角を少し上げて微笑む翔の見慣れた笑顔にほっとして

わかった、と答えた。

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