放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ19)

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ぼんやりとした記憶を追い払いながら、今に意識を戻す。

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「ありがと。松本先生は優しいなー」

二「なにが優しいだよ。こいつさっきおたく来たときなんつったか知ってる？
”顔が死んでるよな”って(笑)」

潤「おい、ちがうって。そんな言い方してねぇだろ」

二「しーまーしーたー。死にかけの顔とか言ったろうが」

潤「そんな嫌な口調で言ってねぇから。お前が言うとなんか
違う感じに伝わんだろ」

「ちょっと、二人とも静かにして」

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近くの女子生徒数人がこっちを見て笑ってる。

彼女たちにばれないよう、二人を睨みつけてから
その子たちに笑顔で、前を向くよう促した。

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その時

ふとあげた視線の先。

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隣の子と笑いながら話す相葉君の向こう側に、

しゃがみこんで欠伸をする大野君が見えた。

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吸い込まれるようにその姿を見つめていたら

ゆっくりとその顔をこっちに向ける。

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目が

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合った。

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すぅっと吸った息が行き場をなくして喉でじたばたする。

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ニコリとすることもできない私に、左手でこっそりピースして。

少し困ったように笑って、両手をポケットにいれながら立ち上がり

そのまま前を向いてまた、大きな欠伸をした。

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二「じゃんけんでもしてんの」

「・・・えっ？」

二「おたくのパーみたいな顔と、あいつのチョキ」

「・・・・・」

二「はいっ、負け～(笑)」

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言い返そうとしたそのとき、いつの間にか話し終えた校長と代わった

翔がマイクの前に立った。

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時折顔を上げてその笑顔を見せながら、流れるように話す。

さっきまで下を向いてばかりだった生徒達も、顔をあげてる。

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いつもと変わらぬ、隙のない爽やかな出で立ちに
ほんの少し違和感を覚えたのはきっと・・・

いつもつけていた私があげたベルトがそこにはなくて

新しいピカピカのベルトがそこに見えたから。

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その存在が

”俺はもう、前に進んでるよ”

そう言ってるようで、ほんの少しの寂しさと焦りを感じた。

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