放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ12)

今日:13 hit、昨日:1 hit、合計:361,604 hit

147:恋に落ちた話　潤Side ページ12

・

・

二「大野は、本気で惚れてるよ」

・

・

二宮が肘をついて、煙を細く吐き出しながら
ためらいもせず話し出す。

その向こう側の櫻井の表情は見えなかったけれど
グラスを握りしめる手に、力が入ってるように見えた。

・

・

二「あいつは、人を好きになることになんの迷いもないよ。
好きになるってことに関してだけは教科書みたいに忠実だ。

あいつが今までどんな恋愛してきたかしらねーけどさ？
たぶんこれが最初の本気なんだろうなって思う。

んで、これを最後にするぐらいの覚悟が俺には見えたよ。

・

・

あいつが惚れた瞬間をさ、俺見たんだわ」

・

・

肌と同じ白い瞼を閉じて、また煙をゆっくり吐きながら

その瞬間を思い出すように口元だけ微笑んだ。

・

・

「あいつが停学くらった日ね・・・去年の。

・

びびるよ？
この俺が息止めたからね(笑)

A先生の呼ぶ声に、立ち止まって・・・

また呼ばれて振り向いた。

・

・

ゆっくりね。

あんときのあいつの顔は、たぶん一番生徒らしい顔だったかもしんない。
年相応っつーの？
今は変に大人びてんのがむかつくよな(笑)

・

まぁ・・・

どうしていいかわかんなくて、寂しいってのを隠さず出してたようにみえた。

・

そのあとA先生が何を言ったのかは俺には聞こえなかった。

でも、言われたあいつには胸貫くほどの言葉だったんだろうな。

・

・

カバン持つ右手が、すんげぇ力はいって震えてたよ。

だまって下向いたまま、大きく息を吸ってー吐いて。

次に顔あげたときの顔、あの顔が完全に恋に落ちてた。

・

この人だって顔？
まっすぐに見てから、なんかまた聞こえない言葉を残して
帰ってったんだよね。

・

・

・

初めて見たよ、人が恋に落ちる瞬間って・・・やつ」

・

・

・

二「櫻井さ、お前が悪い訳じゃないよ。
たぶん、きっかけは大したことじゃないんだよ。

ただあいつの過去とか、大野とかいろいろにかなわなかっただけで」

・

・

優しい口調で、じわじわと傷口をひろげるような二宮の言葉。

でもそれは、男同士無駄な思いやりほどみじめになるもんはないと
二宮もよく知ってるからこそだろう。

承知で聞いただろう櫻井も、大きな息を吐いただけで黙っていた。

・