放課後の背中part5 【Satoshi】 (ページ2)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:361,594 hit

137:鉛の心ページ2

・

繰り返しなる振動音に、すぐ先にみえた駐車場に車をとめた。

口をほんの少し開けて、気持ちよさそうに眠る大野君を残して

携帯を手に車を静かに下りた。

・

・

車から少し離れて、ベンチに腰を下ろしたと同時にまた携帯が震えた。

・

・

翔だった。

・

・

翔「A？何度もごめん、今大丈夫？」

「ごめんね、運転してて・・・今車止めたから大丈夫」

・

・

二次会の会場からかもしれない。

翔の後ろからは賑やかな音楽とたくさんの声が聞こえて
華やかな光景が目に浮かんだ。

・

・

「盛り上がってるみたいだね？」

翔「ごめん、うるさくて。友達は？」

「ん・・うぅん。もう今は一人でなんかドライブしてた(笑)
ごめん急ぎの用事だった？」

翔「そっか。わりぃ何度も。今まだ２次会なんだけどさ、
例の旅行の話したんだよいつもの奴らに」

・

・

何か答えようと口を開いたとき、翔の後ろで声がした。

次々に声をかけられて、それに律儀に答える翔。

錆びた鉄柵越しに、曇った夜空を眺めてる私とは違う世界にいる。

それが、今の私と翔をよく表してるなってふんわり感じた。

・

・

翔「ごめんごめん、もうみんな酔っててすげぇの(笑)」

「お祝いだもんね(笑)・・・で、何？」

・

・

ふと視線を落とした胸元に、から揚げのカケラがついているのを見つけて

少し笑いながらはらう。

・

・

翔「温泉つったら、あいつらも一緒行きたいっていうんだよ。
Aに会ってみたいってみんな前から言ってたし、丁度いいから紹介かねて
どうかなって話になって」

「・・・どうかなってどういう・・こと？」

・

・

出会ったころから、翔がよく言う言葉が浮かんだ。

・

・

”俺ら仲間同士で隠し事とかしない約束でさ”

”なんだって話せる仲間って大切にしたいんだ”

・

・

翔「だから、みんなで温泉旅行行こうって話になったんだけど。
一応Aにも聞かないとと思って」

・

・

・

イチオウ・・・ッテナニ？

・

・

・

そんな思いが、鉛のように心に浮かんだ。

・