第九十三話 ステンレスの淵にあるあやうさ ページ44
京の大通りを沖田さんの一番組が行く。浅葱の羽織を目にした京の人たちは、新選組を避けるように道端へ寄った。
巡察に同行するようになってからわかるようになったけど……やっぱり新選組は、町の人たちから恐れられているみたいだった。
私は一番組に同行しながら、道行く人たちに父様のことを尋ね続けた。
千鶴「あの…すみません。私、人を捜しているんです。江戸なまりのある四十歳くらいの男性です。頭は丸坊主で、優しい顔立ちの医者で───」
「そんな雰囲気の人なら、しばらく前にそこの桝屋さんで見かけたよ」
千鶴「あ……ありがとうございます!」
喜ぶ私に、沖田さんが厳しい表情で何かを言いかけたが、「貴様ら浪人か?主取りなら藩名を答えろ!」と彼が口にするより早く、他の隊士さんの怒鳴り声が響き渡った。その状況にAさんはうんざりした表情を浮かべ、「めんどくさ」と深いため息をこぼした。
沖田「あーあ。よりにもよって、こんなところで騒ぎを起こすなんてね……!」
沖田さんは素早く刀を構え、渦中に飛び込んでいく。Aさんも仕方がないという様子で刀を抜いて、沖田さんの後に続いた。
蜘蛛の子を散らすように、町の人々は悲鳴を上げて逃げ惑う。人の波に押されるようにして、私は沖田さんとAさんから離れてしまった。
でも、これで良かったのかもしれない。彼らの足を引っ張るわけにはいかなかったから。
小競り合いが終わったら合流しようと、私は裏通りから様子をうかがっていた。その時、「坊ちゃん、そこの坊ちゃん。巻き込まれんよううちの店に入りや?」と見知らぬおじさんが私を手招いてくれた。親切に甘えるべきか悩んだところで、はたと私は思い出した。
このお店は、さっき男の人が教えてくれた──。
千鶴「あの……桝屋さん、ですか?」
「へえ。そうどす」
千鶴「あの!私、人を捜していて──」
「き、喜右衛門さん!このガキ、さっきまで新選組の沖田と桜乃と一緒に居たぜ!?」
喜右衛門「なっ!?」
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ちさ - 令和の今も、読ませて頂いてます更新楽しみにしてます。お願いします (4月14日 18時) (レス) @page47 id: f2fc5cfa81 (このIDを非表示/違反報告)
紗希(プロフ) - こちらの作品は今後更新されませんか? (10月23日 6時) (レス) id: ee912569d3 (このIDを非表示/違反報告)
かんざし(プロフ) - はじめまして、いつも楽しく読んでいます。占いツクールの中で一番好きです。黎明録から物語をスタートする作品は中々ありませんから。 (2022年6月10日 8時) (レス) id: 2f199dd6da (このIDを非表示/違反報告)
夜 - 初コメ失礼します!この作品のアニメは私も大好きなので読むことが出来て嬉しいです!これからも楽しみに続きを待ってます!作者様のペースで更新頑張ってください! (2021年12月24日 21時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
真由 - 大好きすぎて何度も読み返してます。きゅん通り越してぎゅんときてます笑更新楽しみにしてます!! (2020年8月18日 0時) (レス) id: 511533d2cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セシル | 作成日時:2019年2月26日 12時