薄桜鬼 新選組唯一の女隊士は沖田総司の女！？少し訳ありみたいで… 弐

第八十九話 猛毒をキャラメルひと粒みたいに言う ページ40

千鶴「すみません！せっかくAさんたちが言って下さったのに───」

『千鶴ちゃん、気にしなくていいのよ……もう…総司』

Aさんが少し怒った様子で沖田さんの方へ顔を向ければ、沖田さんはやれやれといった様子で口を開いた。

沖田「土方さんに掛け合ったのは一君とA。僕は後ろで軽く頷いただけ」

千鶴「それでも……すみませんでした」

後で斎藤さんにもお礼とお詫びを言っておかないと。気付かなかったとはいえ、すごく申し訳ないことを……。
そんなことを考えていると、沖田さんは冷ややかな眼差しで私を見下ろしながら言った。

沖田「ただ、勘違いしないでよね。君の剣の腕前を一君はああ言ったけど……あの程度の剣技は、巡察じゃ何の役にも立たないから。君みたいな腕を道場剣術と言ってね……実戦じゃ何の役にも立たない奴のことを言うんだよ」

『総司…！』

沖田「何？僕、間違ったこと言った？」

『そういう問題じゃなくて………ごめんね、千鶴ちゃん……総司の言い方キツかったよね』

千鶴「い…いえ……沖田さんの言うことはご最もですから…」

容赦ない…だけど極めて的確な評に、私は納得するしかなかった。そんな私を見てAさんがどこか悲しそうな表情を浮かべると、沖田さんは小さくため息をこぼした。

沖田「…ついてくるのはいいけど、不用意にその小太刀を抜いたり、僕たちの前に出ようとしないでね。邪魔をしたり足を引っ張ったりしたら君のこと、本当に斬っちゃ……」

言葉の途中でAさんが沖田さんの口を両手で塞いだ。「本当にごめんね」と申し訳なさそうに謝るAさんに私は苦笑いを浮かべることしかできなかった。

第九十話 他の花は望めない→←第八十八話 目には見えない本当のこと

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す