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第七十三話 スーサイドジレンマ ページ24

斎藤「太刀筋には心が表れる。あんたは師に恵まれたのだろう」

そう呟くように言って、斎藤さんは身を引いた。
胸に手を当ててみると、心臓がばくばくと言っているのがわかる。

千鶴「今の、は……」

沖田「これ、いい小太刀だね。ずいぶん年代物みたいだけど……」

ふと見ると、なぜか沖田さんが私の小太刀を持っていた。空になっている自分の手を見つめて、小太刀が弾き飛ばされていたことに気付いた。

千鶴「す、すみません!ありがとうございます!」

差し出してくれた小太刀を受け取ろうとして、思わず取り落としそうになる。手が痺れて、上手く力が入らなかった。それだけ斎藤さんの剣は重くて威力があると言うことなんだろう。

沖田「大丈夫?やっぱり驚いたかな。一君の居合いは達人級だからね」

千鶴「なんとか……大丈夫です。でも、居合いって……?」

私が遠慮がちに尋ねると、三人は馬鹿にするでもなく解説してくれた。

『帯刀状態から抜き打ちの一撃を放つ技だよ。抜刀直後の刃が上向いているのはわかる?』

千鶴「はい。私の小太刀と同じように斎藤さんの打刀も、刃が上向きになるように帯刀するんですよね?」

斎藤「そうだ。昔の太刀は刀を下に向けて吊るしていたが、今の打刀は腰に差すために上向きにする。本来であれば、刀身が鞘から抜け切るまで待ち、刀を返して相手に刃を向ける手間がかかる」

沖田「居合いは片手で抜き打つことが多いから、結果的に威力が下がって、実用性は低いなんて言われることもあるんだけどね」

千鶴「……でも、斎藤さんの居合いは威力が低いどころか一撃必殺です」

沖田「うん。もし一君が本気だったら……君の小太刀を弾いた後、即座に追撃してトドメを刺してたと思うよ?」

斎藤さんに私を殺す気がなかったから、私は今もまだ生きている。そう思うと改めて背筋が寒くなった。

第七十四話 赦されたような気がした→←第七十二話 タルトの上で躓く少女



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ちさ - 令和の今も、読ませて頂いてます更新楽しみにしてます。お願いします (4月14日 18時) (レス) @page47 id: f2fc5cfa81 (このIDを非表示/違反報告)
紗希(プロフ) - こちらの作品は今後更新されませんか? (10月23日 6時) (レス) id: ee912569d3 (このIDを非表示/違反報告)
かんざし(プロフ) - はじめまして、いつも楽しく読んでいます。占いツクールの中で一番好きです。黎明録から物語をスタートする作品は中々ありませんから。 (2022年6月10日 8時) (レス) id: 2f199dd6da (このIDを非表示/違反報告)
- 初コメ失礼します!この作品のアニメは私も大好きなので読むことが出来て嬉しいです!これからも楽しみに続きを待ってます!作者様のペースで更新頑張ってください! (2021年12月24日 21時) (レス) id: c9a43346ff (このIDを非表示/違反報告)
真由 - 大好きすぎて何度も読み返してます。きゅん通り越してぎゅんときてます笑更新楽しみにしてます!! (2020年8月18日 0時) (レス) id: 511533d2cb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セシル | 作成日時:2019年2月26日 12時

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