24*まだ気づかない蕾の話 ページ24
「お疲れ様。別に要らなかったら飲まなくていいわ」
そう言って缶コーヒーをくれたのは、俺を指導してくださる教育係の佐倉先輩。
きつい顔をしているが体は華奢、なのに弱さを感じさせない堂々とした女性だ。
そんな佐倉先輩に、周りの人たちは怖がっていた。
実際俺も怖いと思っている。
だけど知っている。
あの人はとても優しい人なんだってことを。
*
初日から俺は佐倉先輩に怒られていた。
言い方が結構きついので、周りの人は引くように俺を遠ざけていた。
正直苦しくて逃げ出したかった。
泣きそうにもなった。
でも時間がたつにつれ、俺はあることに気が付いた。
「反省点を生かして仕事に取り組みなさい」
佐倉先輩は、ネチネチと嫌味を言うタイプではないという事。
過去を掘り起こすようにネチネチと言ってこない。
佐倉先輩は何故ミスをしたのか、次どうするべきかをちゃんと明確にしていた。
正直メンタルが弱い俺は泣き叫びそうだけども。
でも佐倉先輩はしっかり俺を指導してくれた。
そんな先輩に俺は憧れていた。
それは俺だけでなく、同期の赤坂もそうだった。
いや彼の場合は違うか。
「赤坂。好きな奴出来た？」
「別にー」
本人は否定するわけでもなく、かと言って肯定もしなかった。
明るく社交的な彼だが、恋愛の話になると途端に大人しくなる。
その反応に最初は純粋な男かと思ったのだが、そういうわけではなかった。
何故ならこないだ飲みに行ったときに、彼は佐倉先輩に盛大な告白をかましたからだ。
彼は佐倉先輩に恋をしていた。
「好きな奴出来たら教えてよ。そん時は応援するよ」
「・・・ありがとう」
怖がられてる先輩の優しいところを、彼は知っているのだろう。
彼はイケメンで仕事もこなせるし、努力家だ。
きっと佐倉先輩のことも振り向かせてしまうくらいに。
そんな恋する彼の姿を見て、俺は応援しようと思えた。
でもやっぱり何だか、寂しくも思える。
「赤坂好きな奴いねぇのかな」
「・・・いないんじゃないの」
「恋愛話とかしたいなって。あ、待って。赤坂誰かと付き合ったら俺らが遊ぶ機会減るなぁ。それは嫌だ」
「いつもうるせぇ言われてるのに」
「でもあいつはいい奴だしな」
「そうだな」
きっと水島と考えることは一緒だ。
いくら相手が優しい先輩だって分かっていても、赤坂が取られるのは複雑なのである。
そんな塩沢隼人の話はおしまい。
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ルリアイス(プロフ) - 夢魔さん» ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2020年1月11日 0時) (
レス) id: 0fcb288ad8 (このIDを非表示/違反報告)
夢魔 - 凄く面白かったです！ これからも応援してます！！ (2020年1月10日 23時) (レス) id: f6b046dcfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルリ☆アイス | 作成日時：2019年10月28日 22時
