君のお話。 ページ49
「やぁ今日もいい天気だね。一緒に食事しにいかないか?」
「行きません」
いつもは女の子が綺麗うっとりさせながらついてくるのに。
彼女だけは、一向に振り向いてくれなかった。
それは人生で初めてのことだった。
俺と佐倉ちゃんが一緒だと怪訝な顔する赤坂君には嫌われていたと思う。
「思う」じゃない、普通に嫌われていた。
靡かない佐倉ちゃんと、それを気に食わないと思ってる赤坂君の反応。
見ていて凄く楽しかった。
だからずっと、彼女を口説いていた。
でもそんなある日、休憩中の彼女に話しかけに行った時、彼女はこんなことを言った。
「きっと私は、恋愛なんてできないんです」
そうやって切なく笑う彼女の表情は、とても綺麗だった。
それからだろう。
その顔が見てみたい、でもいつかは笑顔を見てみたい、そんな思いでいっぱいだった。
俺は懲りずに佐倉ちゃんにアタックし続けた。
だけど毎日「遠慮します」の一点張り。
そんな彼女だったのに。
「・・・結婚式、かぁ」
俺は結局彼女をオトすことが出来ないまま、ついにこの日が来た。
誰とも恋愛は出来ないといった彼女が、結婚だ。
彼女はもう俺を恋愛対象として見ることはない。
もう俺のささやかな恋は終わってしまった。
もう俺が入る隙間はないのだ。
悲しくて、嫉妬で押しつぶされそうになったけど俺はもう大人だ。
三十路の男が泣いている姿は、誰だって見たくないだろう。
赤坂君が入院していた時、俺は二人に「幸せにな」と言って病室を出た。
その時の俺はうまく、笑えただろうか。
未だにその時の出来事が頭から離れず、ずっと心に残っていた。
*
そうして迎えた結婚式。
白いドレスを着た彼女は、今まで見てきた中で一番綺麗に輝いていた。
「綺麗、だな」
そんな独り言は誰にも拾われず、そのまま落ちていく。
さよなら、俺の恋。
女の子は大好きだけど、君のことは誰よりも好きだった。
その気持ちに嘘はないよ。
そんな君には死 んでも言わないと誓ったお話。
**
ランキング15位ありがとうございました。とても嬉しいです。
ここまで見てくださりありがとうございました!
6人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ルリアイス(プロフ) - 夢魔さん» ありがとうございます!これからも頑張ります! (2020年1月11日 0時) (レス) id: 0fcb288ad8 (このIDを非表示/違反報告)
夢魔 - 凄く面白かったです! これからも応援してます!! (2020年1月10日 23時) (レス) id: f6b046dcfc (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ルリ☆アイス | 作成日時:2019年10月28日 22時