【鬼滅の刃】今日も今日とて胃が痛い

胃薬が十八錠 ページ23

『…っはぁ、は…っ』

ぎり、と刀を握り締める手に力が篭る。

奥歯を噛み締め、目の前にいる鬼を鋭く睨む。

Aは苦戦していた。

だが、相手は十二鬼月でも無い。

たかが三下の鬼に柱である彼女が苦戦している理由、それは＿＿＿＿

「血鬼術『針山ノ獄』」

『っ…！！』

相手の血鬼術による猛攻。

針状になった血液を飛ばし、或いは剣として操り。

赤い彼岸花が描かれた羽織に、更に血の花を咲かせ続ける。

右の脇腹から腹部の中心部分までを斬られ。

左腕は既に機能を停止し。

両脚には無数の切り傷があった。

未だ動く右手だけで応戦し、激しく息を切らす。

「まだ死なないの？しぶとい人間もいたもんだ」

『生憎身体は丈夫なんですよ…っ』

「っと、君は鬼殺隊の柱だね？中々にいい剣筋だ」

『鬼に褒められても嬉しく無いんですがね』

「冷たいなぁ」

血で作られた刀と赤紫色の日輪刀が交差し、火花を散らす。

硬質な音が幾度となく響き、無音の戦場に戦いの音を響かせる。

片手で刀を振っているとは思えない様な軽やかな動き。

まるで桜の花弁が舞い散る様な華麗な動きで刀を振るう。

「それにしても、君は呼吸を使わないのかい？あ、もしかして使えないとか？」

『馬鹿にしないで貰えますか。貴方なんかに使う程では無い』

「強気な発言、嫌いじゃあ無い。でもね、強気な奴程隙が大きい」

血の刀が揺れ、無数の針が刃から飛び出て来る。

『(数が多い…！防ぎきるのは不可能…！)』

心臓と頭と喉を守りながら針を防ぐ。

だが

『くぁ''ッ…！！』

防ぎ損ねた針が左目に突き刺さった。

激痛に目が眩み、その場に片膝をつく。

『ッぐ…ぅぅ''…ッ！』

すぐ様に突き刺さった針を力任せに引き抜き、浅い呼吸を繰り返す。

『は…ぁ''ッ…はぁ…ッ！』

「おや、中々に凄い事をするね。出血と痛みでまともな行動は出来ないはずなのに」

面白がるように笑い、Aの前髪を掴み上げる。

「でも残念。私の血には毒があってね。君の左目は一生使い物にならなくなる」

どく、どく、と左目の傷口が疼き、更に血が溢れ出て来る。

『はッ…目は片方が使えなくなっても良いように二つあるんですよ…？』

素早い動作で隠しておいた懐刀を取り出し、前髪を掴んでいる鬼の喉元に突き刺す。

「かッ…」

『立てよ。まだやれるだろ』

跪いた鬼の後頭部に刀を向け、にやりと笑った。

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