胃薬が十四錠 ページ19
あの後、私は部屋に戻るなり即座に準備を始めた。
日輪刀の手入れをし、玉鋼で特別に作って貰った懐刀を腰に刺す。
もう、死ぬ準備は出来ている。
『…あ』
棚には以前にしのぶさんから貰った止血剤と包帯がしまってあった。
『……。』
だが、それには手を伸ばさず棚の扉をそっと閉める。
''これ''はきっと必要ない。
これからも、きっと。
長年鬼を斬る為の作戦を練る内に、自然と分かるようになった。
誰が、どこで、何人死ぬか…
戦況と言うのはその日の天候、その土地の地形、月の位置、風の向き、敵と味方の人数等で変わってくる。
血鬼術を使う鬼がいるのなら尚更の事。
戦況は生きている。
だからこそ私達が息をする様に状況を変えて、敵味方など関係無く牙を剥く。
生きて帰って来られたとしてもきっと無事では済まない。
まず五体満足で帰って来られる可能性はほぼ…というか無い。
身体の一部の機能を失う事は確実だ。
すると、部屋の襖が軽く叩かれた。
「A、入ってもいいかな」
『無一郎さん…?どうぞ』
スッ、と襖が開くと、いつに無く真剣な表情をした無一郎さんがいた。
まるで、これから私が任務に行くのを止めようとしている様な。
「ねぇ、考え直してよ。僕達ならAを守れるし、十分な戦力にだってなるはず」
なのに、どうして?と、聞かれなくても目がそう訴えかけてきているのが分かった。
お館様から、さっきの話を聞いたんだろう。
『…那谷蜘蛛山の件を、覚えていますか?』
「覚えてる。覚えてるけど…」
『あの件ではかなりの犠牲者が出ました。これ以上鬼殺隊から犠牲者を出す訳には行きません。増える前に対処をする、これが最適解だと私が判断した限りです』
「…っ」
『…私は元より鎹烏で皆さんを呼びつけて救援を呼ぶつもりなど露ほどもありません』
「なんで…っ?!下手したら…死ぬかもしれないのにっ」
『鬼殺隊に入隊し、柱になった時点で死は覚悟しています。死とは生の裏側であり、常に私達につきまとうもの。もし仮に私が今日の任務で死んだとしても、それはただ表と裏が変わっただけに過ぎませんから』
少々言い方がキツかったかな。
でも、ここまで言わないと彼はきっと諦めてくれないだろう。
「…Aがいなくなるのは嫌だよ…また、退屈になってしまう…」
ぽつり、とこぼれ出た言葉が私の胸に痛い程突き刺さった。
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ぷりっつ - 夢主ちゃんのスカートが膝より高い. ..ゲスメガネ呼んでこよう...チャキッ← (2021年5月9日 2時) (レス) id: 8a7ce8997d (このIDを非表示/違反報告)
たまご(プロフ) - 絵に一目惚れしました……!!面白い!すごい!!! (2019年11月25日 21時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
ガコ - この小説、すごく面白いですね! あと、33の時、すごくカゲロウテイズっていう歌に似ていますね! (2019年11月25日 0時) (レス) id: 8244513a71 (このIDを非表示/違反報告)
もやし好きのもやし(プロフ) - コメントありがとうございます!素晴らしい作品だなんて勿体無いお言葉です…!続編もよろしくお願いいたします!! (2019年10月5日 8時) (レス) id: 6a4e808260 (このIDを非表示/違反報告)
緩莓 - 本当に最高です!!!こんなに素晴らしい作品に出会えて光栄です(´;ω;`)更新お疲れ様です!続編も読みます!これからも頑張ってくださいね! (2019年10月5日 7時) (レス) id: 6806c82317 (このIDを非表示/違反報告)
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