時間 side nishijima ページ1
雑誌の撮影。
朝からのスタジオ撮影で、まだ頭があまり機能していない。
幸運なことに、俺は最後の方らしくこうしてバナナをゆっくり食べることが出来てるんだけれど。
目の前には、スタイリストさんに細かいチェックを受け、撮影準備が整ったAがいる。
A。
俺の中で、1番時間的な付き合いが長い。
AAAになる前のレッスンから、一緒のグループだった。
一番年下なのに歌もダンスもセンスがあって色気があった。
でも女子は16-19歳が多かったから全然溶け込めてなくて、全く笑わない子だったんだ。
アイドルになる気あるの?って先生に怒られていたのもAが多かった。
俺は才能があるAが隅に追いやられているのが、どうしてか許せなかった。
「Aちゃん。おはよ。」
俺は少しずつだけど近づいた。あいさつから始めた。
少しすると、ちょっと笑顔で返してくれるようになった。
「にしくん、おはよう。」
休憩中も一緒にいるようにした。変な噂も立てられたけど、気にしなかった。
それよりも、会うたびに笑顔を見せてくれて、目が合うようになったのが嬉しかった。
時々Aから話しかけてくれた。
話の中で実家から一人上京したことや寮で暮らしてること。Aのことがたくさん分かるようになった。
「A。飯食おう。」
少しずつ秀太もAに馴染んできた。
「にしくん、行こう!」
話せば話すほど可愛い笑顔を見せてくれた。
あれからどんだけ時間が経ったのだろう。
置かれている立場も、周りの目も、俺自身も随分変わった。
でも少しも変わってないものもある。
「にしくん、にしくんってば!」
「あ?」
目の前にA。
「やっと起きた。もうすぐ西くん撮影だよ。」
いつの間にか寝てた。
「びっくりしたぁ。」
「にしくんずっと呼んでるのに、全然起きないんだもん。」
あの頃よりとても魅力的になって、よく笑うようになった。
だんだん大人な女性になるAを見ると、以前とは違った感情も生まれた。
「A、ありがと。」
ちょっとふくれ顔のAの頭を撫ぜ、感謝の気持ちを伝えれば、俺の大好きな笑顔を見せてくれた。
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作者名:がっきー | 作成日時:2017年10月22日 14時