□と○ (ページ10)

今日:10 hit、昨日:2 hit、合計:24,213 hit

10 ページ10

．

来栖さんと教室に戻れば胡桃が1人で俺らを待っていた．

「もう！2人ともどこ行ってたの！」

『あれ？紫耀は？』

「紫耀くんは女の子に呼び出されたよ？」

その言葉を聞いた瞬間、来栖さんは昼休憩の時のように一瞬だけ表情を変えた．今度は驚いた顔ではなく、悲しそうな顔だったけど．
でも、やっぱり来栖さんは何事も無かったかのように話を続けた．

「紫耀、顔は良いから昔からモテるんだよね」
「今頃告白でもされてるんじゃない？笑」

「やっぱりそうなのかな！紫耀くんかっこいいもんね！」

胡桃は呑気に青春だななんて目を輝かせているが、横の来栖さんはどこか作り物の笑顔で切なそうな目をしていた．すると、話題の男が帰ってきた．

「ごめんごめん！お待たせ！帰ろう！」

「紫耀くん！女の子からの話ってなんだったの？告白？」

「えー、言わなきゃダメ？」

「それは答え言ってるようなものだよ笑」
「ねえ、廉？」

『あ、おん、そうやな』

「やべ、他の人には言わないでよ？」

胡桃は興味津々に紫耀に質問しまくってる．俺だっていつもなら胡桃みたいにぐいぐい聞いてる．だけど、来栖さんの切なそうな表情を見てしまったら何故かその話題には入れなかった．

「あ、ごめん！私、今日図書委員があるんだった．」
「先帰ってて？」

「え、Aちゃんそうなの？」
「せっかくみんな揃って帰れると思ったのに、、」

「ごめんね、胡桃ちゃん．また今度帰ろう？」

「うん！」

「何時に終わるの？待ってようか？」

「ありがとう、紫耀．でも、大丈夫．1人で帰れる．」

「でも帰り遅いんでしょ？待ってるよ？」

「本当に大丈夫だから！じゃあ、また明日ね！」

そうして足早に教室を出ていってしまった来栖さん．なんか俺わかった気がする．きっとそう．

「しょうがない、3人で帰ろうか」

紫耀の一言で俺らは下駄箱で靴を履いて校門へ向かった．こういう時はきっとそっとしとくべきだと思うし、いつもならそうしてる．でも、今日の俺は．今日の俺は何故か来栖さんを1人にしちゃいけないって思ってん．

だから、、

『ごめん！2人とも！教室に忘れ物したから取ってくる！先歩いといて！』

こうして俺は2人の返事を聞かずに来た道を足早に戻った．

．