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「酔い醒めた?お風呂入れる?」
「うん、大丈夫」
「じゃあ、入ろう?」
うとうとし始めた誠也くんの両手を引いて、お風呂場に歩いていく。相変わらず大きな浴室は、ふたりで入ってもかなり余裕だ。
「葵さん、脱がせて」
「な…っ、や、やだ!自分で脱いで」
「ぬーがーしーてー!」
ばたばたと身体を揺らし、駄々をこね始めた大きな赤ちゃん。何を言っても頑なに拒むから、仕方なく洋服を脱がしてあげる。ただし、上だけ。
「はい、ば、万歳して…!」
「んー」
「見てないよ、私、見てませんからね」
「前にしたとき、全部見たじゃん」
「……っ、し、知らない!」
「はい、葵さん真っ赤ー」
俯きながら精一杯、目を瞑って誠也くんの上着を脱がせたのに。なんで茶化されなくちゃいけないんだ。そう思って、誠也くんの背中をぺちんと叩く。
いで、と声をあげた誠也くん。ただその笑顔がやっぱりだいすきで、私は赤い顔のまま、つい許してしまうんだ。
「はい、葵さんも脱いでー」
「や…っ、自分でできるよ」
「はいはい、わかりました」
「こら…っ」
一生懸命抵抗しても、誠也くんには敵わない。するする、洋服を脱がされてしまった。下着だけは自分で脱ぎたいと、かなり必死に抵抗したら、しょうがないなあと笑って。先入ってると、浴室へ行ってくれた。
お風呂の電気を薄くして、渋々入っていく。目を瞑っていてほしい、と誠也くんにお願いしたけど、ちらちら目を開ける誠也くんに、思い切りお湯をかけた。
「ふうー、あったかー」
「誠也くん、疲れてる」
「そう?」
「うん。無理、しないでね?」
「…大丈夫」
「誠也くんは、自分のことになると嘘つくね」
私の嘘は見抜くのに、そう付け加える。すると。
「葵さんだって、俺の嘘見抜くじゃん」
そう、苦笑いしていた。うん、やっぱり、少し顔が曇ってる。チームのことや、自分の身体のこと、他にたくさん、私なんかじゃ分からない苦悩を、きっと誠也くんは抱えてる。
少しでも、誠也くんの力になりたいなって思うのに、何もできない自分がもどかしい。そう俯いてしまうと。
「……葵さんに会えて、葵さんとお風呂入れて、今ちょー癒されてるから」
シワ、と私の眉間を指しながら、誠也くんは笑った。誠也くんの力になれているのかな、って不安になったけど、その笑顔に私まで笑顔になってしまった。
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aoi(プロフ) - みささん» 喜んでもらえてよかったです…!私もリクエストを描かせていただいたことが、実は初めてだったので…少しでも楽しんでもらえてよかったです*こちらこそこそ、リクエストありがとうございました。 (2019年6月3日 20時) (レス) id: 7976bd9ab4 (このIDを非表示/違反報告)
みさ(プロフ) - aoiさん、今回はリクエストに応えていただきありがとうございました。作者さんにリクエストをしたのは初めてのことだったので感激しました!彼女と龍馬くんのことで頭がいっぱいの誠也くん、もう可愛くて可愛くて…!笑ステキな作品をありがとうございました。 (2019年6月2日 18時) (レス) id: 4640caef6b (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - あおさん» 全て拝読していただいたようで、ありがとうございます。そして本当に嬉しいお言葉まで…!これからも選手の魅力が伝わるようなおはなしを、楽しく描いていければなと思います。ゆったり更新させてもらってます、これからもよろしくお願いします* (2019年5月28日 2時) (レス) id: 7976bd9ab4 (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - aoiさんの小説全て読ませていただきました。水彩画のようなふんわりしたあったかい文章がとても素敵で、初めて拝読するお相手でもその方の魅力がとても伝わってきて、次はこの人に注目してみよう!と思いました。再読しながら更新をお待ちしております! (2019年5月27日 21時) (レス) id: 9596e5bcb4 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - みささん» はじめまして*うれしいコメント、ありがとうございます。私が描く誠也くんは、全力ででれでれなので…きゅんきゅんしてもらえたら何よりです〇主人公ちゃんと龍馬くんには仲良くしてもらって、誠也くんにヤキモチ妬かせちゃいましょ!笑 参考にさせて頂きます* (2019年5月20日 23時) (レス) id: 7976bd9ab4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:aoi | 作成日時:2019年2月3日 2時