To you 【セブチ短編集】

・(mh side) ページ23

ー mh side ー


ずっと2人とも望んでいた妊娠

2年前に一度流れてしまったことがあったから
今Aのお腹ですくすく大きくなっているこの子には
心の底から元気に産まれて来て欲しいと思う。


だから、僕も心配症になりすぎていた

臨月に入って産休をとっても
家事は必ず完璧にこなしてくれるし、
僕に何かを頼ろうとすることも無かった。


棚の上のホコリを掃除しようと
ブラシ片手に丸椅子の上に立っていた時

椅子がカタカタと揺れていたし
椅子に乗っても届かなかったのか背伸びしてブラシを伸ばしているAを見て、


mh「あ！Aダメ！安静にしてなきゃダメでしょ？」

そう少し強く言ってしまった

椅子から落ちてお腹を打ったらどうするの、
打ち所が悪かったらどうするの。

そんな高い所
自分でやろうとしないで僕にお願いしたらいい


だけど、Aに言われた

” 奪わないで ” という言葉


妊娠するのも女の人で、

もちろん出産するのも女の人

でも、育児をするのは女の人だけじゃないでしょう？


僕は育児に対して ” 手伝うよ ” なんて姿勢じゃなくて

” 一緒に頑張ろう ”という姿勢でいたいから

まだこの子は産まれてきていないけど、

今の内から僕に頼ることをして欲しかった。


寝室に向かえば

頬に乾いた涙の跡を付けながら寝息をたてて寝るA

自立していて、いつでも強く見える君が

唯一幼く見えるこの寝顔は、僕が死んでも大切にしたいもの


･

初めて大喧嘩をした日

どうしてもカレーが食べたかったAと

どうしても肉うどんが食べたかった僕


あの日は珍しくどちらも

” 今日はこの気分だ！”

の日だったからお互い譲らなかった


そこで見つけたカレーうどんのお店

Aが食べたいカレーと、
僕が食べたい肉うどん

これならお互いの欲を満たせられる

そう2人で顔を見合わせてお店に入った。


まだ無言のままの2人

頼んだカレーうどんが到着していざ食べ始めた瞬間


勢い良く啜った麺から飛び散るカレーのルー

たまたま2人とも白いTシャツを着ていたから
綺麗に茶色くシミになったそれに、思わず笑顔になる。



あの日から僕たちの間では
喧嘩した後はカレーうどん。これが決まりだ


･

あともう少しでキミに会えるね。


キミが歩けるようになったら、

ママとパパと3人で手を繋いでお散歩をしよう。


비어 있는 내 두 손에세상의 모든 미소를 쥐여줘서(空いている僕の両手に世界の全ての笑顔を握られせてくれて)

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