宮とその先 ページ22
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「そういうところ、嫌いじゃないですし」
そう言うと驚いたように立ち止まる婚約者。
「…ほんと?」
「嘘言ってどうするんですか」
と笑って見せると確かに、と婚約者も笑う。
また歩き出した。
「…なあ、」
歩き出したのに、また立ち止まるから少しむっとした。
「何ですか?」
私の手を握り、目の前に移動する婚約者。
「俺、本当に好きだよ」
「…ぇ」
何を言われるかと思えばまたそういうことを言う。
「Aのこと、大好き」
と夕暮れの空に背を向けて、はにかんで言う婚約者はとても綺麗に見えた。
ふっと気を抜いたら、消えてしまうような。
「…ねえ、だからさ」
今度は、すごく真剣でかっこいい顔をして。
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言葉のその先、しても良い?
「…っへ」
どういうことなのか、と頭の処理が追い付かない私をよそに一歩近づく婚約者。
「っ…ちょ、あの」
ちゃんとした言葉を発せないでいると、婚約者は手を離し、その手を私の頬へともっていく。
その動きがスローモーションのように見えて、ぴと、と頬に触れる指先が熱くて。
「ぁ…」
青色に光るその瞳が少しずつ近づいてきて、目を逸らしたいけれど、逸らせない。
抵抗も、何もできない籠の中の小鳥のようである。
「ねえ…すき」
「…っ」
婚約者の発する言葉が、正確に耳に入ってくる。
「すき」の二文字が、ぐるぐると頭の中で渦巻く。
それが頭で処理されるよりも、婚約者のほうが僅かに速かった。
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るり(プロフ) - 今日ほんとに見返してたところの更新だったので嬉しかったです泣 この先のお話とかめちゃくちゃ妄想してるので、いつかお話になるの楽しみにしながらこれからも見返そうと思います! (2021年1月14日 0時) (レス) id: 1011553aa4 (このIDを非表示/違反報告)
月雫 runa - 完結おめでとうございます!! 最初から最後まで楽しめました! (2020年3月22日 12時) (レス) id: 7dc9d510f6 (このIDを非表示/違反報告)
おとは(プロフ) - はじめまして!スゴくよかったです(*^_^*) (2020年3月18日 7時) (レス) id: 083a813a8f (このIDを非表示/違反報告)
さくり@歌リス(プロフ) - ヤバい!最高でした(@_@) (2020年3月16日 22時) (レス) id: 0cd51e6ec6 (このIDを非表示/違反報告)
響(おと) - すき。 (2020年3月16日 11時) (レス) id: e976740a08 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:田鈴 | 作成日時:2020年1月2日 17時