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炭治郎side
『あの…炭治郎君。
私達、…距離置いた方がいいと、思う』
俺たちはバスを降りた。
あたりは暗く、人気のない坂道を歩く。
しばらくして君の小さな声が響いた。
炭「…は」
間違いなくその言葉は本心だということにすぐ気づいた。
嘘のにおいが全くしないんだ。
言葉が…出てこない。
夜なのに、何故か君の顔が鮮明に見えてしまう。
それはなんとも言えない、台詞に似合わず悲しくもなさそうな表情だった。
何故、何故君は今そんなことを言い出すんだ。
違うだろう、A。
そこはちゃんと俺に謝るところだろう。
彼氏がいるにも関わらず、他の男と…冨岡先生と連絡を取り合っていたこと。
確かに俺は怒りを抑えきれず、君の綺麗な手を【傷つけてしまった。】
炭「そうか。分かった。
A…俺がさっき君の手を傷つけてしまったから怖くなったんだな?
悪かった。君のことになるとつい___」
『さ、触らないで…!』
ピタッ…と、君に触れようとした手が固まる。
ああ、どうしてそんな泣きそうな顔をするんだ。
誰かに何か言われたとしか思えない。
善逸?冨岡先生?バイト先の男?
『そ、そういうことじゃ…ないんだよ。炭治郎君っ』
いつもと様子がおかしいじゃないか。
さっきまで普通の君だったじゃないか。
いつものAは何処へ行ってしまった?
『ま、まだ少し痛むのっ…
手の傷もっ…力強く抱きしめられて切れた口の中もっ…。
私、炭治郎君の優しいところが好きだったのにっ、私ずっと…怖い顔しか見てないよっ』
肩から息を吸って、彼女は俺の目をはっきりと見つめながらそう言った。
必死になっているからだろうか、声のトーンもいつもと違う。
下唇を何度も噛みしめて、ピンク色のリップが落ちてしまったな。
両手をギュッと強く握りしめてい震えている。ああ、足も…まるで弱った子犬みたいだ。
こんな君を見るのは初めてだな。こういう時でさえ、その姿を愛おしいと思ってしまう。
可愛くて…可愛くて…とても君の子供みたいなわがままを聞いてられないよ。
炭「…すまなかった。
たださっきも言おうとしたけど、君のことになるとついいつもの俺じゃなくなるんだ。
分かってほしい。俺がおかしくなるのは君が好きだからだよ。
だから距離を置くなんてそんなこと言わないでくれ。」
君が見たいのは俺の優しい顔だろう?
怖い顔が嫌なら、なるべくしないようにする。
だから、ほら…言うんだ。
『わかった』って。
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night(プロフ) - 大好きです! (2023年1月18日 16時) (レス) id: 5602430d0e (このIDを非表示/違反報告)
リゼ - とても好きな話です! 更新楽しみにしています! (2021年12月8日 14時) (レス) id: e6cdaefa61 (このIDを非表示/違反報告)
そらね - 炭治郎怖いけどこーゆーのもすきですね...更新お願いします!!! (2020年11月29日 10時) (レス) id: 4fd123f034 (このIDを非表示/違反報告)
ほのか(プロフ) - たんじろこわい、、、でもそんなところも嫌いじゃない、、、更新楽しみにしてます、、! (2020年10月29日 9時) (レス) id: 26a5fa8b7e (このIDを非表示/違反報告)
菜桜 - 更新楽しみにしてます (2020年8月12日 23時) (レス) id: 0c7894f68f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なみ | 作成日時:2020年3月18日 19時