第三十一話−愛別離苦・其ノ弐− ページ31
「………もう少しすれば伊地知さんと五条先生が来る 病院は今日で退院して高専に移ればゆっくり療養が…」
まだ話の途中だったが、伏黒は不自然に言葉を途切れさせた。
おかしい。
病室はどこの病院と似た様な作りで、来た時と何ら変わりはない。だが、何かがおかしいと気付く。
悠歌に視線を向けると、顔を俯かせたまま身じろぎひとつせずにいる。表情は髪で隠れてわからないが、悠歌の体から呪力が水の様に漏れ出ているのは分かった。
伏黒の体に極度の緊張が走るのとほぼ同時に、病室に"異常"が現れる。
この病室は個室で広さは見た所六畳から八畳(基準が分からないのでこの位)程だろうか?
壁面が音もなく崩れ落ち、床は濁った泥水の様な色へと変わり、天井は元々無かったかのように消えている。
そして、それらに代わる様にゆっくりと周囲に展開されていく朽ちた建造物。ギリシャにある神殿に似た物や、日本人に馴染み深い桜。他にも様々な物がめちゃくちゃな配置で構築されていく。
まるで、様々な国や地域から無理やりツギハギに繋ぎ合わせているかの様だ。
「(これは、あの特級と同じ生得領域!?馬鹿な!コイツは術式を持ってないはずだろ!?)」
その間にも領域は辺りを侵食するが如く、じわじわと広がっていく。
「…んな、…ばいい…」
「虎杖!!!」
「みんな、消えちゃえば…」
「ハイ そこまで」
軽やかな声と共に建造物が消え、床も壁も何もなかったかの様に元に戻った。
伏黒と悠歌の間に割って入ってきたのは五条だ。悠歌を気絶させたのか、五条の腕の中で再び目を閉じて眠っている。
「いやあ 恵今のは危なかったねー」よいしょっと
ひょいと持ち上げて横抱き…所謂"お姫様抱っこ"をしながら気の抜けた声で話し掛ける五条。「(…傍から見ればただの不審者にしか見えないな)」と、思った伊地知。
「五条先生 今のは…」
「うん 未完成の生得領域だよ」
「!虎杖は術式を持ってないはずじゃ…」
「それはまた今度説明するよー」
「伊地知 後でマジビンタな」と、言い残して五条は病室を後にした。
伊地知は心の中で「(理不尽!)」と叫んだが声に出すことはしなかった。
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レキ(プロフ) - 麗さん» コメントありがとうございます!すみません(汗)変換機能の事を忘れてうっかりそのまま書いちゃってました…直しておきます!! (2021年2月24日 20時) (レス) id: 86fe443189 (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 13ページ 悠久の"悠"に"歌"で とありますが、名前変換出来るのに書かれると可笑しな事になりませんか?? この場合どちらかと言うと名前固定した方がしっくりきます。 (2021年2月18日 0時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
レキ(プロフ) - 畢竟無さん» コメントありがとうございます!あともう少しで続編書けますので!もう暫しお待ち下さい!! (2020年7月15日 13時) (レス) id: 3dee18d2c3 (このIDを非表示/違反報告)
畢竟無(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新楽しみにしてます! (2020年7月15日 12時) (レス) id: f1eda83896 (このIDを非表示/違反報告)
レキ(プロフ) - あみみさん» コメントありがとうございます!楽しんでもらえて嬉しいです!!私も姉妹交流会の話が好きなので頑張りますね!! (2020年6月23日 5時) (レス) id: 2b56840397 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レキ | 作成日時:2020年2月20日 6時