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ページ4

『ねぇ、塔一郎くん』




「なに?Aちゃん」





『…塔一郎くんは中学受験しないの?』






Aは、泉田の家のこたつの中で
くつろぎながらそう言った。
そんなこと聞かれると考えていなかった泉田は、
読んでいた本を勢いよく閉じた







「えっ…ど、どうして?」





泉田は目の前でこたつの上に積まれたミカンをひたすら剥いて食べるAに聞き返す






『…え?だってまわりの頭良い友達、みーんな違う学校行くっていうから…塔一郎くん頭いいから…どうなのかなーって』






そう言い終わると、ずっと手元のミカンに注目していた視線は
泉田に向けられる






目が合った瞬間、泉田の心臓が跳ねた
心臓が反応したのは理由が2つ





1つ目は、Aと目が合ったから
まぁ、何とも可愛い理由なこと

 


2つ目は、実際に受験を考えていたからだ
つい、先日まで両親とずっと都内の進学校に
受験するか話あっていた





だが、答えは初めから決まっていた




泉田は喉を上下に動かし、一呼吸した





「…僕は受験しないよ。Aちゃんと同じ学校に行くよ」






泉田の言葉を聞き、Aの表情が少し‘良い雰囲気’になったのに気づいた




『あ!そうなんだ!じゃあ、塔一郎くんとは中学も一緒なんだね』




あ、ミカンあげるよ。と剥いたミカンを差し出される
その表情と声のトーンがたぶん少しは喜んでいるはずだと
泉田は感じていた
付き合いが長いからそれくらいはわかる
自然に、泉田の口元が緩む





『なにー?塔一郎くん、ニヤニヤして』





「…えっ、!?あ…えっ!?」





『私とまた一緒に学校行けるの嬉しいんじゃないのー?』





泉田は首を縦に振ることができず、顔を赤くする





『ほんと、塔一郎くんってよーく顔赤くなるよね!まっ!中学でも宜しくね!塔一郎くん』





「う、うん!よ、よろしくね」






小学六年の冬
Aと同じ学校に通いたい為に
受験を諦めたなんて親にも言える訳もなかった
そもそも受験する気は無かった



これは泉田塔一郎だけの秘密だ

君と僕は違う→←・



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作者名:ちょす。 | 作成日時:2019年11月16日 1時

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