・ ページ3
意識しているのは泉田だけであり
Aは何も意識もしていない
小さい頃から泉田のことを守ってきたAにとっては
手を繋いだり、腕を掴んだりすることは日常だった
はっきり言ってしまえば
Aにとって泉田は弟みたいな存在だった
弟にドキドキするわけがないのである
『もー、本当に塔一郎くんは私がいないとダメなんだから!もっとバッっと!ビシーっと動かないと!モテないよー?』
ニコッと笑いながら冗談混じりでいうAに
泉田は心地よさを感じていた
「そうだね…でも、僕はどんくさいから…それに別にモテたくないよ…」
むしろ、このまま‘どんくさい’ままでいた方が
Aと一緒にいられるのではと考えていた
『もー、すぐそうやって弱気になるんだから…でも自転車乗ってる塔一郎くんカッコいいよね!』
最近始めたんだよね?と聞いてくるAに鼓動がはやくなった
「そ、そうかな!凄く楽しいんだよ!ロードレースって言うんだよ!」
泉田はAの口からその単語がでてくると思わず
嬉しくなり饒舌になる
『!へぇ!そうなんだ!競争とかあるんだよね?優勝したら絶対みんな塔一郎くんのことカッコいいとおもうよ!』
Aは本気でそう言っていた
「…Aちゃんは、どう思うの…!?」
『え?』
「ぼ、僕がレースで優勝したら…カッコいいっておもう!?」
ギュッと手さげを持っていない手に汗をかく
Aの顔を見れずに足元に視線を落とす
『…そりゃもちろん!カッコいいって思うよ!』
‘カッコいい’
泉田はその言葉に胸を打たれた
Aちゃんがカッコいいって思ってくれるんだ
「…僕、ロードレースの試合で必ず優勝してみせるから…!!」
『うん!応援してる!もしかしたら好きになるかもよー』
冗談だけどーと笑いながら泉田の前を歩いて行くA
…Aの冗談で言った言葉は
小学五年生の泉田を本気にさせるのは簡単だった
24人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ちょす。 | 作成日時:2019年11月16日 1時