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意識しているのは泉田だけであり
Aは何も意識もしていない
小さい頃から泉田のことを守ってきたAにとっては
手を繋いだり、腕を掴んだりすることは日常だった




はっきり言ってしまえば
Aにとって泉田は弟みたいな存在だった
弟にドキドキするわけがないのである







『もー、本当に塔一郎くんは私がいないとダメなんだから!もっとバッっと!ビシーっと動かないと!モテないよー?』






ニコッと笑いながら冗談混じりでいうAに
泉田は心地よさを感じていた






「そうだね…でも、僕はどんくさいから…それに別にモテたくないよ…」





むしろ、このまま‘どんくさい’ままでいた方が
Aと一緒にいられるのではと考えていた
 
 




『もー、すぐそうやって弱気になるんだから…でも自転車乗ってる塔一郎くんカッコいいよね!』





最近始めたんだよね?と聞いてくるAに鼓動がはやくなった





「そ、そうかな!凄く楽しいんだよ!ロードレースって言うんだよ!」



泉田はAの口からその単語がでてくると思わず
嬉しくなり饒舌になる




『!へぇ!そうなんだ!競争とかあるんだよね?優勝したら絶対みんな塔一郎くんのことカッコいいとおもうよ!』




Aは本気でそう言っていた





「…Aちゃんは、どう思うの…!?」





『え?』




「ぼ、僕がレースで優勝したら…カッコいいっておもう!?」





ギュッと手さげを持っていない手に汗をかく
Aの顔を見れずに足元に視線を落とす







『…そりゃもちろん!カッコいいって思うよ!』






‘カッコいい’
 





泉田はその言葉に胸を打たれた
Aちゃんがカッコいいって思ってくれるんだ






「…僕、ロードレースの試合で必ず優勝してみせるから…!!」






『うん!応援してる!もしかしたら好きになるかもよー』




冗談だけどーと笑いながら泉田の前を歩いて行くA





…Aの冗談で言った言葉は
小学五年生の泉田を本気にさせるのは簡単だった

・→←君は僕の気持ちに気づかない



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作者名:ちょす。 | 作成日時:2019年11月16日 1時

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