【泉田塔一郎】分岐点 (ページ17)

今日:10 hit、昨日:2 hit、合計:12,184 hit

君のためじゃないページ17

「…お前、本当にそれでいいのかよ」

目の前に立っている男
黒田雪成…今は仲良くなってユキと呼んでいる

そのユキに怒り口調で言われ、僕は黙って首を縦にふった

「…そうかよ…いいんだな」

ユキは僕の目から目線を外さない
その真剣な瞳に一瞬、意志が揺らぎそうになった

僕は唾を飲み込み、喉を潤す

「うん、いいんだ。これで」

僕はユキに笑いかけると
ユキは複雑そうに眉間にシワを寄せた

そうこれでいい。…これでいいんだ

ー

「…あの、佐々木さんってクラスでどんな感じなの？」

僕はあの時、迷っていた
でも、咄嗟に身体…いや口が動いたんだ

「えっ？佐々木さんのこと？」

「何ー？泉田、やっぱりAちゃんのこと好きなんだ？気になるんだー」

女子達は僕が声をかけると一瞬、肩が跳ねた
けれど僕は彼女達になめられているのだろう
すぐにグイグイと追い詰められる

「…っ…別に好きじゃないよ！ただ、佐々木さんの様子がおかしいから…それに君達、佐々木さんの話題をだしてたから…何か知ってると思って…」

「えーわかんないわーごめーん」
　

「…そっか、ありがとう」

この時、僕はわかっていた
去っていった彼女達が‘主犯’だって

何故だろう、物凄く腹が立つ

叫びたい

こんなにどうして腹が立つのか

　

‘彼女達が許せないから？’

…それもそうだが、それじゃない

Aちゃんのことを気にしている自分だ

‘あの時’からAちゃんのことが
嫌いになった

今でも……嫌いだ

嫌いのはずだ

だけど、学校でAちゃんを見ると胸が苦しくなる

なんで？
嫌いなのに

…あぁ、辞めよう
頭が痛くなる

「…それよりも、どうしようか…」

僕は今、起こっていることに考えを変えた

…‘彼女達’をこのまま見過ごしたくない

「…僕に出来ること…」

胸に手を当てる
左胸が激しく動いた気がした

　

…Aちゃん、決して君のためなんかじゃない

さっきから脳裏に涙を浮かべ、苦しそうなAちゃんが焼きついて離れない

　

…だけど

君のためなんかじゃないから
今の僕にはそう言い聞かせるしかない