【泉田塔一郎】分岐点 (ページ13)

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黒田は顔を真っ赤にさせ、口を開けたり閉じたりしていた

『黒田くんって表情豊かで面白いね』

泉田も表情が豊かだったが、もう関わることが無くなった
今のAには黒田は‘栄養源’となっていた
素直に言ったAの発言に黒田は更に顔を赤くさせる

「～ッ別に面白くねーよ！お、俺は帰るからな！」

　
これ以上Aといたら暑くて死にそうだった
黒田はガタッと立ち上がり、Aに背をむけ教室の引き戸に手をかけた

『…黒田くん！』

黒田の背中にAの声があたった

「な、なんだよ」

引き戸に手をかけたまま振り向くと
すぐ傍にAがいた
黒田はビックリして引き戸から手を離し
背中が扉にぶつかった

『…痛くなかった！？』

「別に痛くねーよ！」

ズボンのポケットに手を突っ込み、
はぐらかした
本当は背中が痛いと叫びたい気持ちでいっぱいだが
更に失態を重ねたくなかった

『…ならよかった……あのさ、黒田くん、また一緒に話してくれる？』

Aは黒田の目をみて、素直な気持ちを伝えた

「…！…あぁ、また今度な」

黒田は‘また次がある’のだと心が踊った
口角が上がるのを抑えるのに必死だった

『よかった。じゃあまたね』

Aは黒田に微笑み、先に教室を出ようとした

「あのよ…！よかったら一緒に帰らねーか？」

黒田は思わず言ってしまった
Aともう少し一緒にいたい…‘欲’がでたのだ

そんなAは目を見開いて黙っていた

「あ、いや、もう暗いしあぶねーと思ってだな…」

反応が無いので、黒田はとっさにフォローをいれる
するとAは見開いていた目を細めて微笑んだ

『黒田くんって優しいね…でも、ありがとう。一人で帰るね』

バイバイと黒田に手を振って、Aは教室からでていった
Aのいなくなった教室で黒田は外を見つめた

「俺、何してんだろうな」

1人の女子にここまでするなんて自分らしくない
…一つわかることはAのことが気になって仕方なかった