【仁王雅治】悪いことだってわかってる

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『先輩飲まないんですか？』




「車でおまえさんを迎えにきたの忘れたか？」




フッと笑う先輩と私は‘また会っている’







誰か私に説教をしてほしい





「‥なんじゃ？‥‥ほぉ、Aちゃん、顔赤くなっとるの」




『えっ‥』


ジョッキをテーブルに置き、自分の頬に触れる


確かに、頬が熱い
私はお酒に弱い しかし自分が弱いのはわかっているため、飲む量はいつも制限している
しっかり意識もある





『‥じろじろ見ないで下さい』


顔が赤くなってるのを面白そうに頬杖をつきながら見つめてくる



「可愛いの」



『‥冗談もほどほどにして下さい』



「‥冗談じゃないって言ったらおまんはどうするんじゃ？」


『‥え？』


どういう意味だ？
色んな考えを巡らせていたら



先輩は椅子から立ち上がり
伝票を手にとってレジへ向かう



『先輩！？まだ残ってますけど！』


「ほれ、飲み会は終わりじゃ。家帰ってDVDみるぜよ」




・




・






‘この前’と同じように先輩の家のソファに座っている。勿論、私と先輩の間は一人分空いている





「さ、今日は時間あるんじゃ、ゆっくりみるぜよ」


部屋が暗くなりテレビの明かりだけになった


『‥何で消すんですか？』


「こういうのは雰囲気が大事じゃろ？いつも部屋暗くするんよ」


前は電気つけっぱだったのに、と
ツッコみたかったけど我慢した





‥






「‥のぉ、Aちゃん、寒くないか？」




先輩の声が突如、聞こえてきた



『丁度いい、温度ですよ。先輩、寒かったらエアコン消してくださっていいですよ』


私の目線はテレビに向けたままだ
意外と面白い。この映画




先輩が立ち上がったようだ
足音が聞こえる



何処かにいったのだろうか
テレビから目線を外し、先輩が座っていた方向をみる




「毛布ぜよ」



『寒がりなんですね』




定位置に座るかと思えば

　

先輩は私の真横に座り
左腕を私の背中にまわし、
左手で肩を引き寄せられた




「これで、暖かいなり」


毛布意味ないじゃん

お酒のせいなのか
私は暑くてしかたなかった



『先輩、からかってますよね』



「からかってないぜよ」




『嘘だ』




「嘘じゃない」





一瞬だった





テレビの画面が消えた




そのかわり、

先輩の顔がゼロの距離で目の前にあった

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