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Jojima Side
昨日の晩、女将から“あのわらび餅をダメにして欲しい”
…と、頼まれた。
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今までお金のためならなんだって協力してきたけど、
………それだけはどうしても出来なかった。
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あの日、親父がされたことを…、
職人が魂を込めて作ったものを、
この手でめちゃくちゃにするなんてできるわけが無い。
俺は結局、そのまま何もせずに真夜中の厨房を出た。
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それなのに今朝、わらび餅は床に散乱していた。
2年前、あの催事で見た光景が蘇り、
心臓が止まりそうになった。
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城島「…待ってくださいっ…!!
…あのわらび餅をダメにしたのって…まさか!」
今日子「…誰かさんが役に立たないから、
余計な仕事が増えたわ。」
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…ああ、俺はとんでもない勘違いをしていたようだ。
2年前のあの日、うちのお菓子をダメにしたのは、
高月椿じゃない、……この人だったんだ。
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もう何もかもやるせなくて、
取り返しのつかないことをしてしまった
罪悪感と脱力感に苛まれながら厨房に戻ると、
床に散らばったわらび餅を
一人で片付けているAさんがいた。
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城島「…………催事、行かないんですか。」
「……これ片付け終わったら行くよ。
…しまやのわらび餅、食べて貰わなきゃ。」
城島「…食べてもらうって、どうやって。」
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わらび餅はひとつ残らずダメになってしまったはずなのに、
何言ってるんだろう…、と思いながら、
俺も片付けを手伝おうと
床に張り付いたわらび餅に触れた瞬間…、
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城島「……!……これって…。」
「………ふふ、気づいた?」
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ビックリして彼女の方を向けば、
Aさんはイタズラが成功した子供のような顔で笑った。
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…なるほど、そういうことか。
触った感触ですぐに分かった。
これはダミーだ。
今まで失敗して固くなったわらび餅をダミーに使ったのだ。
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城島「じゃ…、じゃあ、本物のわらび餅はどこに…!?」
「今頃、ちゃんと搬入されてる頃だと思うよ。」
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紙兎(プロフ) - みかさん» お久しぶりです!ありがとうございます! (2020年11月4日 0時) (レス) id: 4f2a78c08e (このIDを非表示/違反報告)
みか - 久しぶりです。めっちゃ楽しい作品になってますね。 (2020年10月31日 11時) (レス) id: de0ef4c44d (このIDを非表示/違反報告)
紙兎(プロフ) - ぱぴこさん» ぱぴこさん初めまして!とっても嬉しい感想をくださってありがとうございます!面白いと言って頂けると書いていて良かったと思えます!移行してもよろしくお願いいたします´`* (2020年10月31日 11時) (レス) id: 4f2a78c08e (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - 紙兎さん、はじめまして!いつも見てます!本当に本当にこの作品が大好きで更新を日々待ちわびております笑 紙兎さんみたいな上手で面白い作品が作れるよう頑張っていきます!移行おめでとうございます!これからも応援してます! (2020年10月29日 23時) (レス) id: f7a6ef29b4 (このIDを非表示/違反報告)
紙兎(プロフ) - カリリンさん» そう言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります(^^) (2020年10月27日 23時) (レス) id: 4f2a78c08e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紙兎 | 作成日時:2020年9月24日 23時