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七桜「……、」
「……、」
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いつもより緊張感の漂う厨房。
椿が、七桜さんの作り上げたわらび餅を食べる様子を、
取り囲むように見守る。
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椿「…水を食べてるかのような滑らかさ。
でも弾力もあり、風味も感じる。
完璧にあのわらび餅の味だ。」
「…!」
七桜「練ってるとね!ある瞬間ふと感覚が変わるの!
あの瞬間がわらび餅の肝だと思う…!」
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椿からもようやく認められて、
緊張感が緩んだかのようにたくさん喋り出す七桜さん。
その表情はとても晴れやかで、達成感に満ち溢れている。
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椿「予定していた通り、百貨店の催事にはこれを出す。」
山口「…よし、急いで準備しましょう。」
「「はい!」」
七桜「山口さん、配分は、
わらび粉1:冷水4 でお願いします!」
山口「分かりました。」
.
みんな楽しそうな顔をしている。
ここにいる人達は、みんな和菓子が大好きなんだろうな。
.
.
その日は1日がかりでわらび餅の準備をして、
それが全て完了したのは夜の10時頃だった。
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椿「あとは明日、搬入するだけだな。」
「…………うん。」
椿「…?」
「…………ぇっ、…あ、なに…?」
椿「…何、じゃないだろ、どうした。浮かない顔して。」
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職人さん達がみんな上がって、今は厨房に私と椿だけ。
出来上がったわらび餅を見て、
なんだか嫌な予感が拭えずにモヤモヤしている私に、
彼は不思議そうな顔をしていた。
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「…なんでもない。」
椿「いいから、言ってみろ。」
.
「…………嫌な予感がするの。
このわらび餅、ちゃんと無事に
明日搬入できるかな…って…。」
白藤屋さんのお菓子の時も、
女将が細工してめちゃくちゃにされたから…、
どうしても拭えない不安を椿に打ち明けると、
.
椿「心配するな、」
「…?」
椿「その辺は、ちゃんと考えてある。」
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私の不安を取り除くみたいに優しく微笑んだ椿は、
私の頭をふわっと撫でた。
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紙兎(プロフ) - みかさん» お久しぶりです!ありがとうございます! (2020年11月4日 0時) (レス) id: 4f2a78c08e (このIDを非表示/違反報告)
みか - 久しぶりです。めっちゃ楽しい作品になってますね。 (2020年10月31日 11時) (レス) id: de0ef4c44d (このIDを非表示/違反報告)
紙兎(プロフ) - ぱぴこさん» ぱぴこさん初めまして!とっても嬉しい感想をくださってありがとうございます!面白いと言って頂けると書いていて良かったと思えます!移行してもよろしくお願いいたします´`* (2020年10月31日 11時) (レス) id: 4f2a78c08e (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - 紙兎さん、はじめまして!いつも見てます!本当に本当にこの作品が大好きで更新を日々待ちわびております笑 紙兎さんみたいな上手で面白い作品が作れるよう頑張っていきます!移行おめでとうございます!これからも応援してます! (2020年10月29日 23時) (レス) id: f7a6ef29b4 (このIDを非表示/違反報告)
紙兎(プロフ) - カリリンさん» そう言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります(^^) (2020年10月27日 23時) (レス) id: 4f2a78c08e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紙兎 | 作成日時:2020年9月24日 23時