泡沫夢幻 -弐-【わたどう】

□47 ページ2

**









｢………った……ｯ…｣





.






落ちた拍子に肘を擦りむき、
背中を打ち付けてしまった。


ズキズキと痛む体はなかなかすぐに起き上がれない。







.








…ああ、もう、
早く着物取らなきゃいけないのに…。








.









そう思い、頑張って動こうとした刹那…、







.









＿＿＿＿＿＿＿…Aっ…！！







と、誰かに名前を呼ばれた気がして、
反射的に上を見上げると…、








私が落ちた衝撃で、

タンスの上に置かれていた大きな壺が
今にも落ちそうになっていた。








.









…………このままじゃ落ちてくる…。


そう分かっていても、恐怖で体が固まってしまう。




もうダメだ、と、ぎゅっと強く目を瞑っていると…、








.








.









ｶﾞｼｬﾝっ！という陶器が割れる音。


私の体には誰かが覆いかぶさっていて。


頬に感じた生ぬるい感覚と、
嗅ぎなれた香りにハッと我に返った。







.









.









｢……………つばき…？｣

椿｢………っ…｣

｢…つばき…っ！……ねぇ…！…椿！？｣







.








私を庇ったせいで、頭を打ってしまった椿。

彼の頭からぽたぽたと垂れる血が事の深刻さを表していて、
それを見てまた頭が真っ白になってしまう。







.









｢…椿っ、しっかりして…！椿…ｯ…！｣






.







必死に名前を呼んでみるけど、

ついに彼は私を腕に抱いたまま、
その場に倒れ込み、動かなくなってしまった。









**

□48→←□46

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す