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今の時間帯、部屋に戻れば椿がいるかもしれない。
そう思うとすぐに戻る気にもなれず、
フラフラしながら時間を潰していたら…、
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“なんの真似だよ…!!”
という城島くんの怒鳴り声が聞こえた。
何事かと思い、
声の聞こえた茶室の方に様子を見に行けば、
そこにいたのは城島くんと、椿だった。
一体何があったのだろう…、
私は二人のことが気になって、
物陰に隠れながらこっそりと聞き耳をたてていた。
.
城島「…これ、あんたの仕業だろ。
……あんたにこんなことしてもらう筋合いはない。」
城島くんが持っていたのは1枚の紙だった。
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椿「……それは報酬だ。
今度のデパートの催事に、あのわらび餅を出す。
その売上を本来の持ち主であるお前に
先に前払いしただけだ。」
城島「…っ…元はと言えば
あんたがうちの店を潰したんだろ…!?」
「やめてっ…!」
.
椿の胸ぐらに掴みかかろうとしたのを見て、
咄嗟に止めに入ってしまった。
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「城島くん、何か勘違いしてる、
椿は城島くんの実家を潰したりしてない…!」
城島「……それはあんたがそう信じたいだけだろ。」
「違う!ちゃんと話せば分かっ… ッ…」
城島「あんたに何がわかんだよ…!
小さい頃から何不自由なく育って、
老舗和菓子屋の跡取り息子と婚約して、
何もかも恵まれてるあんたに…!何が…っ!」
.
1歩、また1歩、と距離を詰め寄ってくる城島くん。
その憎しみが籠った瞳が怖くて、後ずさりしていると、
椿が私を隠すように前に立った。
.
椿「……わらび餅は必ず完成させる。
………話がそれだけなら早く部屋に戻れ。」
城島「…っ…、」
.
キッ…、と椿を鋭く睨みつけた城島くんは、
そのまま何も言わずに茶室から出て行った。
.
椿と二人きりになり、静寂の中、
私は緊張で張り詰めていた糸がプツンと切れたように、
その場に座り込んでしまった。
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紙兎(プロフ) - みかさん» お久しぶりです!ありがとうございます! (2020年11月4日 0時) (レス) id: 4f2a78c08e (このIDを非表示/違反報告)
みか - 久しぶりです。めっちゃ楽しい作品になってますね。 (2020年10月31日 11時) (レス) id: de0ef4c44d (このIDを非表示/違反報告)
紙兎(プロフ) - ぱぴこさん» ぱぴこさん初めまして!とっても嬉しい感想をくださってありがとうございます!面白いと言って頂けると書いていて良かったと思えます!移行してもよろしくお願いいたします´`* (2020年10月31日 11時) (レス) id: 4f2a78c08e (このIDを非表示/違反報告)
ぱぴこ - 紙兎さん、はじめまして!いつも見てます!本当に本当にこの作品が大好きで更新を日々待ちわびております笑 紙兎さんみたいな上手で面白い作品が作れるよう頑張っていきます!移行おめでとうございます!これからも応援してます! (2020年10月29日 23時) (レス) id: f7a6ef29b4 (このIDを非表示/違反報告)
紙兎(プロフ) - カリリンさん» そう言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります(^^) (2020年10月27日 23時) (レス) id: 4f2a78c08e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紙兎 | 作成日時:2020年9月24日 23時