第拾玖幕 彼女の陰謀 ページ20
依愛side
瑠奈は、静かに眠りについた。不意打ちで体の主導権を奪い取ったんだから、随分な疲労が溜まったはず。少なくとも、私が動いている間は起きないだろう。
「ごめんね、おやすみ」
色々工作したから、他のみんなからは瑠奈が主導権を握っているように見えるはずだ。そうしたら、もうお迎えが来ているはずだから、待ち合わせ場所に向かう。
瑠奈のお仲間はイプシロンに気を取られている。その間に、気付かれないようにしながらその場を去る。
「……」
一度、振り返ってしまった。青いマントの少年が、こちらを見ている。しー、と唇に指を当てて、ジャージを脱ぎ捨てる。脱いだところで、裸でもないから見られて困るものでもないし。
貧相なからだだ。手足は棒切れみたいに細くて、肋が浮いている。瑠奈には、元々食事習慣がなかったから仕方が無い。
彼も健全で良識ある男子中学生。女子が着替え始めたら、目を背けるに決まっている。そうそう、それでいいの。
ジャージを羽織り直して、その場から立ち去った。瑠奈の荷物の中から、黒いパーカーと私服のスラックスを取り出す。ジャージはここに置いていこう。
「さて……行きますか」
待ち合わせ場所は、吹雪士郎が雪崩に遭った場所の近く。ここからだと、バスもないから徒歩で行くことになる。
と、その前に。辺りを見回す。耳をすます。もう近くに人はいない。なら、使ってもいいかな。
パーカーに着けている、大ぶりのピンバッジ。バッジトップは、中に物が入れられるようになっている。
「壊れてないといいけどなー」
中身はケース入りのコンタクトレンズ。見たところ傷はなさそう。汚れもついてない。
一旦着けてみる。視界に浮び上がるモニター。瞬きと目の動きで、コマンドを入力していく。
入力が終わって、ロード中のマークが表示される。そしたら両手を広げて、その真ん中くらいを見つめて待つ。
とす。出てきたのは、昔から使ってたタブレット端末。こっちに来る時、一緒に持ってこれたみたいでよかった。
今度は端末にコマンドを入力。今度は小さなボタンのついたキーホルダー。カチ、とボタンを押すと、端末のモニターに地図が表示される。
目的地にあたる地点をタップすれば、光が辺りに満ちる。次に目を開けた時、目の前に居たのはお仲間さん。
「これからよろしく、影山さん、不動くん」
にっこり笑ってやると、彼らはにんまりと悪い顔をした。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2018年11月3日 19時
