world７７ 知らないところで ページ41
瑠奈side
マネージャーになったと言っても、すぐに慣れろとは言えない。今まで選手だったし、ボク自身もまだ慣れてない。
「雷門でちょっとはお手伝いしたけど、ぜんっぜん出来てなかったしなぁ……ごめんね、役に立つどころか邪魔だよね」
「そんなことないですよ。でもなんだか不思議ですね、篠宮さんがマネージャーって……それにしても、なんで急に？」
「……ちょっと、色々あってね。機会が来たらちゃんと話すから！ 今はちょっと説明が難しいというか、なんというか……」
あんまり触れてほしく、ないかな。頬を掻きながらそう言うと、神門はサッと顔色を変えて謝ってきた。
「ごめんなさい！」
「あっ、責めてるわけじゃないんだ。ごめん、お互い今は触れにくい話題だと思うから、気まずくなっちゃうだろうしあんまり話したくないってだけで、その……ボクの方こそごめん、言い方が悪かったね」
暫し、沈黙が落ちた。あんまり心地よくは無い、なんとなく嫌な感じ。ああそうだ、気まずい。直球で話しちゃうとか、ぼんやりしてたのかな。
「ぷっ……ふふ、ふたりともおんなじ顔してる」
「えっ？」
耐えきれなくなったみたいに、大谷が笑いだした。おんなじ顔、って言われて、神門の顔を見ると、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしていた。
「……ボクこんな顔してる？」
「いや、今はしてませんけど……ふふっ、さっきまでほんのちょっとだけ眉を下げて、どうしたらいいのかわからないって顔してて……あんまりそっくりだったから、なんだかおかしくなっちゃって」
ふふ、ふふふ。大谷はまだ笑っている。でもちゃんと手はドリンクを作るために動いているんだから、器用なものだ。
教えてもらったとおりに作るだけのボクとは違って、大谷と神門は選手の好みに合わせているんだろう、若干それぞれの量が違った。
「……マネージャーって、すごいね」
「えっ、どうしたんですか急に」
「やってみて思ったけど……いつも大変だと思うけど、沢山サポートしてくれて、ありがとう」
タオルやユニフォームの洗濯に、ドリンク作り、時々ピッチ整備のお手伝い。タイム計測やら練習メニューの周知やら道具の用意やら、練習の全体的な手伝い。あと日常生活での監督とか、ご飯作ったりとか。これはマネージャーだけじゃないけど。
何気なくやってもらってたけど、二人で大変だっただろうなぁ。邪魔にならないかつ出来る範囲で頑張ろう。
落ちてきた袖を捲り直して、また作業に戻った。
world７８ マネージャー見習い中→←world７６ 頼って欲しい
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
