番外編 長く短い白昼夢�� ページ34
円堂side
取り敢えず、マフラーを取ってきて口元まで隠れるように巻いた。それから、グラウンドで練習してるだろう菜花のところへ向かう。
「“ありがとう、助けてくれて”」
「気にするなって！ ……怖くなかったか？」
「“怖かったよ。もう終わりかなって思った。手遅れになる前にわかったから、嬉しい”」
何が手遅れになるんだろう。瑠奈はにこにこと笑っている。メモ帳とペンを持たせているが、すぐに意思の疎通が取れないのは面倒だ。
改めて、瑠奈の姿を見る。俺たちのものとは少し違うジャージが、違和感を出している。背丈は小さいし、体も軽かった。手足なんて折れそうなくらい細い。
「お前は、ちゃんとご飯食べれてたか？」
「“どうしたの、急に”」
「お前が、あんまりちっちゃいから、心配になった。目元の隈も濃いし、悪いけど健康に見えない」
「“そっか、そう見えちゃうか。でも大丈夫だよ、あとちょっとで、此方は全部終わるから”」
口元は隠れて見えない。いや、隠してるから見えないのは当然だけど。見えたとして、視覚的にアウトだからやっぱり隠しておかなきゃ。
「“ボク、結構危機管理能力低いみたいでね。よく皆に心配かけちゃうし、それが危ないって本当にわかってなかったの。言い訳にはならないと思うけど、今は治してる途中。此処のボクは、治せてるみたいで良かった”」
あんまり嬉しそうに、他人事みたいに言うものだから、両手で勢いよく頬を挟んだ。むにむにと引っ張ったり揉んだりして、戸惑っている瑠奈を更に慌てさせる。
「おああ！？ あい、あい！？」
「ははっ、何言ってんだかわかんね！ でも瑠奈。お前はちゃんと、お前のところの俺たちに大事にしてもらえよ。皆お前のこと心配してるだろうから、安心して頼れ！」
「“わかったから、突然ほっぺた挟むのやめてよ。びっくりしちゃった”」
悪い悪い、頭をポンポンと撫でながらそう言うと、瑠奈はほっぺたをパンパンに膨らませてそっぽを向いた。
小さな子供みたいだ。妹が居たら、こんな感じかな。元の瑠奈は、頼れる仲間！ って感じだから、昔の瑠奈を見てるみたいで懐かしくて、嬉しい。
この瑠奈は、俺達にとって自分がどれだけ大事なのかわかっていないらしい。多分、俺達より長い時間一緒に居るだろうから、瑠奈ともっと仲がいいんだろう。
「あ、そろそろグラウンドだ。おーい、菜花！」
此方を向いた菜花の笑顔は、引き攣っていた。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
