番外編 短く長い白昼夢�� ページ31
瑠奈side
さて、どうしたものか。彼らに会うのは、あまり良くはないと思う。偽物と切り捨てられてもおかしくないからだ。勿論、ボクの知る彼らはそんなことしない。
けれど、日記によると“一星充”への彼らの対応は、かなり酷いものだったらしい。そういうのはちょっと遠慮したい。
「瑠奈さーん、起きてますよね〜？」
「すいません間に合ってます！」
「どんな夢見たんですかちょっと瑠奈さ……え……？ え、えぇ……？」
部屋に入ってきたのは、銀髪の女の子。菜花柚葉。“ボク”が作った体をスピカが使うことで存在している、ボクと同じ“居るはずの無い者”。
此処には優が居ない。代わりに柚葉が居る。薊は、どちらにも居るようだ。こちらではあげは、と呼ばれているんだったか。
「ちっちゃあい……かわいー」
「ヤメテ……ヤメテ……」
とか考えても、現実逃避ができない。柚葉が膝の上に乗せて離してくれない。こんな肉付きの悪いボクじゃなくてぷにぷにの誰かでも触りに行けばいいだろうに。こんなに触りたがるのは、多分ボクが“篠宮瑠奈”であるからなんだろうけど。ボクだって、小さくなった知り合いが居たら触りたくなる。
「で、今度は何やってこうなったんですか？」
「……合わせ鏡を……」
「なんでそんなことしたんですか」
ぐうの音も出ない。ボク自身よくわかっていなかったし、想像していたよりずっと危険だった。そういえば、なんで優はあの方法を知っていたんだろう。
「……心愛に、会わせてあげたかったから」
「え？ 更に訳わかんないんですけど……心愛さんに会わせてあげたい、って、誰が会いたがってたんですか」
「……心愛のとこの、一号」
「んん？ ……ああ、はい。動かないでくださいね」
あ、失敗しちゃった。ピトリ、と首筋に冷たいものが当てられる。ボクのことを冷徹だなんだと言う割に、スピカだって十分冷たい。身内以外にはとことん冷徹なのが、スピカだ。
「あなたは私の知ってる瑠奈さんよりずうっと甘い。あなたは私を害せない。さて、合わせ鏡でやってきた、甘ったれた瑠奈さん。ちょっとお話しましょうね」
優しげな笑顔を浮かべているけれど、目は据わっている。底冷えのする瞳が、とても怖かった。
ペチペチと冷たいそれで首を叩かれる。どうすれば、彼女は止まるだろう。今は、誰も知っている人がいない。此処のボクがどんな動きをしていたのかも、詳しくわからない。
「絶体絶命、かなぁ」
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
