world７３ 投げ出すのは嫌なのに ページ27
円堂side
瑠奈が、イナズマジャパンを抜ける。薄々思ってはいた。日本に帰って、危ないことなんてしないで過ごす方が、瑠奈にとってはいいんじゃないか、と。
でもやっぱり瑠奈は強いから、居てくれるだけで安心する。チームメイトたちについて相談したり、未完成の技に対してアドバイスをもらったり、凄く手伝ってもらってたから。
だから、頼ってしまっていた。だって、瑠奈が離脱するのが、どうしょうもなく怖い。吹雪が離脱したばかりで、そのときは“仕方がないな”と思えたのに。
「なん、で……」
ドアの隙間から覗き込んでいたのに、声が漏れてしまったせいで気付かれた。いや、気づかれたとかそういうのはこの際どうでもいい。瑠奈がいなくなってしまうのは嫌だ。
「おや、早いですねぇ円堂くん」
「……残念だけど、意見を変えるつもりはないよ。いつまでここにいられるのか、ずっと考えてきた。このペースで消えて行ったら、大会が終わる頃にはもういないかもしれない……そうなる前にボクは此処を出たほうがいい」
ひらひらと半透明になった手を振った。それが酷く寂しくて、なんとも思ってないような顔が苦しい。
なあ、辛いんだろ。一人で消えるなんて、嫌だろ。俺はお前と、皆と、最後まで、一緒に戦っていたかったのに。
「……最後まで、一緒に戦いたかった」
「そんなの無理だよ。ボクには出来ない。ユズも、あげはも、残していかなきゃいけないのは嫌だけど、一緒に帰ることもできないから」
「一人に、なっちゃうじゃないか。なんでそんな……」
言いかけて、はっとした。瑠奈は泣きそうな顔をして、拳を握りしめていた。
「じゃあ、どうしろっていうのさ！ ボクはここに居られない、居たとしても戦えない、ただのお荷物なのに……戦えなくなった無様な姿を、わざわざ見せろって！？」
「戦えなくなんてならない！ 今までも特訓に付き合ってくれて、戦略も沢山教えてくれた！ 王帝月ノ宮で、野坂や西蔭を助けてくれてたのも知ってる！ 一緒に悩んで、怒って、コートの外でも助けてくれた！」
「っでも！ 辛いんだよ……いつ消えちゃうかわからない！ 全部、中途半端においていくことになるかもしれない！ まだ全部、終わってない！ 怖いよ、ずっと怖かった！ ボクはもう……どうしたらいいのか、わかんないから……」
ふらりと揺れて、一瞬姿が消えたように見えた。思ったより時間がない。
「お願いだから、此処にいてくれ」
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
