world７１ スペイン戦、終局 ページ25
柚葉side
キックオフと同時に、ロングシュートの技が放たれました。多分、フィールドの皆は気付けないくらい早いです。
「うえぇ……？」
「あれ、すっごい早いねー？」
「それで済ませていいんですか！？」
ぎょっとしてしまって、思わず視線を隣に向けた。
瑠奈さんは本当に嬉しそうで、楽しそうで。試合に出られなくても、一緒のチームだから、喜び合って、悔しがり合って、そっか、私より長く皆さんとサッカーしてるんですもんね。
「……試合に出れなくて悔しいですか？」
「うん。悔しいよ。どうしてあそこにいないんだろう、って、出てない試合はいつも思ってる。だって、皆と走るの凄く楽しいから。もっともっと、やりたくなっちゃう」
そういうもの、ですか。円堂さんが野坂先輩と稲森先輩を呼んでますね。少人数での作戦会議ですか。
あら、あらら？ なんだか噛み合ってないように見えるのは気の所為でしょうか。円堂さんは戸惑っていますが、二人は納得した様子で灰崎くんと一星くんお話してますね。
「んー……？ あの面子……ラストリゾートかな」
「ですねぇ。豪炎寺先輩以外にも出来るんだと知られることは、抑止力になればいいんですが……まだ未完成、対策を取られると厄介ですね」
思ったとおり、ラストリゾート(仮)は止められてしまいました。でも、円堂さんの言っていた事はラストリゾートではなかったようです。
「ここからじゃ全然聞こえませんね……」
「いやこの距離は流石に無理でしょ……」
あ、再開しました。でも、なんだか変です。稲森先輩が、一人で持ち込んでいるように見えます。
「……あ」
よくよく思い出してみたら、稲森先輩のドリブル、まだ誰にも止められてません。
「全然止まりませんね……」
「ん、そうだね。稲森のドリブル、最初はあんなに上手くなかったんだけど……ほら、うちのフォワード、みんな癖が強いから」
ああ、そうです。稲森先輩はハチャメチャに癖の強い皆さんにボールを渡し続けていたんでした。そりゃあ、対応力も上がりますね。
「若干思うところはあるけど……円堂、すごいこと考えるね……」
「……発案者が円堂さんだと、大体許されてる気がしてきました……」
はは、違いないや。瑠奈さんは、ゴールに飛び込んだ稲森先輩を見ながら笑っていた。
試合再開直後、クラリオさんと稲森先輩の本気のぶつかり合いが始まった。一度お互いに弾かれ、またボールに食らいつく。
そこで、試合が終わった。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
