world６９ いっしょがいいの ページ23
柚葉side
おかしいな。そう思ったのは、スタジアムに入った頃。いや、瑠奈さん──姉さんが変なのはいつものことだけど、今日は円堂さんとはぎこちないし、何か見つけては居なくなってしまいました。
そりゃ、話してほしいです。だって、絶対守られてるんですから。あの人は誰にも言わずに一人で抱え込んじゃうから、時々背負ってるものを奪い取る勢いでぶつかりに行かないと潰れちゃうかもしれないんです。
さて、瑠奈さんが帰ってこないまま前半が終わってしまったけれど……まだ帰ってくる気配はないですね。全く何処へ消えたのやら。
まあ、皆さん時々気にしてる素振りは見せながらも、プレーにはほとんど動揺が出ていなかったから、まあいいかな。
「後半は菜花さんに代わって坂野上くん、吹雪くんに代わって剛陣くんに入ってもらいます」
なるほど、灰崎くんは交代させないと。あらあら吉良さんがプッツンしてますね、確かに交代させたほうがいいとは思いますけど。肩で息してるのに、フィールドで走れるんですかね。
まあまあそこはフィジカルトレーナー兼その他諸々の析谷さん。なんとどうにかしちゃうんですね。気功マッサージ師……？ 何でも出来すぎてもはや怖いですこれは。こわーい。
にしても、さっきまで疲労困憊だったのに、体が軽くなる。いやはや、気功とは凄いもので。
「これ体内のエネルギーの流れを利用してるんですよね？ もしもなんですけど、動けなくするのとかって気功ですか？」
「え？ ……不可能ではないけど、どうしたんだい？」
「いえ……人を運ぶとき便利そうだなぁと思って」
勿論、資料を読み耽っている姉さんにしか使うつもりはないけれど。でもそんなに疲れるなら、普通に泣き落としたほうが早いかなぁ。
さて後半、野坂先輩の作戦はうまくいくんですかねぇ。結局力で負けたら意味がないし、下手したら同士討ちみたいなことになりますけど。そのあたりはきっと皆さん大丈夫ですよね。
「……おや？ これは少し、まずいことになりましたね……」
苦虫を噛み潰したような顔で、監督が呟きました。何があったんでしょう。
「そうですねぇ……菜花さん。この人は瑠奈さんで、あっていますか？」
「ええと……？ なんですかこの画ぞ……ひっ」
いや、やだ、瑠奈さん。なんで、なんでそんなところに。だからいやなの、おいていかれるのはいや、いっしょがいいの。
「なんで、なにこれ……」
なんで、牢の中で拘束されてるの。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
