world６８ “皆を”守る手段 ページ22
瑠奈side
あれからしばらく円堂を避けていたら、あっという間にスペイン戦の日になってしまった。
「え、あれ……」
スペインの代表選手の中に、気になる選手がいた。レイナルド・バラハ。彼は予選で大怪我を負って、本線出場が危ぶまれていた。今日、ボクはスターティングメンバーには入っていない。せめて、二十分くらいは時間があるだろうか。
「監督、少し席を外します。ユズ、相手の選手の動きをよく見てて。少しでもおかしなところがあったら、遠慮なく指摘しちゃって。頼んだよ」
「……はい。任せてください！」
ユズは快く引き受けて、円陣を組みに向かった。急がなきゃ、時間がない。取り敢えず控室にある、一応用意しておいた服に着替えてからだ。
「はーぁ、見られたらどうしようかなぁ」
薄い青色のシャツに、白のネクタイ。スラックスとジャケットは、光沢はあるものの無地の黒。簪を取って、ヘアゴムで髪を束ねて、色の違う右目には明るい金色のカラコンを入れて、ちゃんと男に見えるように多少化粧する。
「あ、あー。んんっ、大丈夫、ボクなら……私なら、どうにか出来る。彼らを守れる」
己を鼓舞しろ、一人でだって立っていろ。全ては彼らの為に。
「……」
今の私は情報屋。イナズマジャパンとはなんにも関係がないことになっている。勘ぐってくる人は居るけど、そのあたりはAと名乗ることで大体が解決する。
その名前と容姿を知っている人は、日本と日本に縁のある人にしかいないから。それに、名前にも色々と細工をしているから、辿り着いたとしてもボクだと断定することはできない。
「失礼します、フロイ様」
「ああ、君か。どうしたの？ 何か、気になることでも？」
「至急お耳に入れたいことが。……バルセロナ・オーブに、使徒が組み込まれてしまったようです」
こそり、と耳打ちすると、フロイは目を見開いた。正々堂々とした試合が見られると思っていたのに、残念だっただろう。
行きがけに調べたが、あの怪我の手術をあれほど早く終わらせることのできるコネは、彼らにはなかった。となれば、オリオンを疑うのは妥当だ。
「……兄さんのところに行くよ。ついてきて」
「はい」
これで、オリオンはどうにかなるけど。日本が勝てるかどうかは、正直円堂にかかっている。
どれほど点をとっても、同じ数入れられてしまっては意味がない。守備が上手く行かないと、いくらオフェンスが強くても勝てない。
「……頼んだよ皆」
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
