world４９ 送別会にて ページ3
瑠奈side
「おつかれさま、あげは。頑張ったね〜良い子良い子」
「へへ、そうだろ、俺頑張ったんだ！……姉さんに着て欲しかったから」
「はいはい、ちゃんと後でドレス着てあげるから、拗ねないで」
イナズマジャパン送別会。色々と便利なので、社交の時はスーツで行動している。髪も下の方で結んで、男に見えた方が危険が少ないからね。
今は挨拶とかが半分くらい終わったところ。癒やしとして、可愛いあげはと戯れている。可愛いっていうと、怒られるんだけどね、可愛いのが悪い。
「さて、あと半分。頑張ってくるよ〜」
あげはを離して、また面倒な腹の探り合いを始める。負けたこと無いし、あまり心配していないけど。皆はこのパーティー、楽しんで欲しいからね。一人で受けておくよ。
ふと写真を撮っていた風丸と目があった。すぐに視線を外したけど。
「篠宮くん」
「はい？」
呼ばれた。誰の声だったか、記憶を掘り起こしている間に、もう相手に名乗られてしまった。
「オリオン財団の新条琢磨だ。久し振りだね、元気だったかい？」
「嗚呼、その節はお世話になりました。ご覧の通りピンピンしてますよ。ベルさん兄弟はお元気ですか？特にフロイ、ボクのこと気に病んでいたりはしませんでしたか？」
「……大丈夫さ」
妙な間が空いた。詮索して警戒されるのも悪手だ、流して声を掛けた理由を聞き出したほうがいいかな。でも面倒だし真っ直ぐで。
「回りくどいのは苦手なので、直球に行きましょう。何の御用で？」
「君ほどの策士が回りくどいのは苦手、か。まあいいだろう。ベルナルド様が、君達に全面協力する事を決めてくださった。君を欲しがる他の組織がすぐに動き出すだろう、気を付けるように」
「そうですか……ありがとうございます、ならこのあたりで挨拶周りを終わらせて楽しむとしますね」
「君も子供だろう、他の二人を守る為に犠牲になることはないんだよ」
「ふふ、あの子達には笑ってほしいという、ボクの我儘ですから。その為に尽力するくらい、当然でしょう？」
クスクスと笑ったあと、ではこれで。とその場をあとにした。その後はドレス抱えて目を輝かせてたあげはに付き合って、二人一緒に回ることにした。
「なんかまた凄いの作ったね……綺麗」
嬉しそうに笑うあげはに苦笑して、更衣室から出る。周囲の視線が好意的なものに変わった。
「上手出来だな！似合ってるぞ姉さん！」
「ありがとう、あげは」
大事な大事な、小さな幸せ。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
