world６４ “金髪の男” ページ18
円堂side
「は？ なんで、どういうことだ！？」
「何って、そのまんまの意味だよ？ まあ止める手段なんてないし、わたし達の主人格が頑張ってたから、スピカとあげは──いや、こんなん言っても伝わらないか。えーと、なんて呼ばれてたっけ……ああそうだ、柚葉と薊、あげはだっけ？ まあいいや。二人は残るさ」
「あの二人も未来から来たのか？」
「んー……これは面倒だから説明しないけどさ。あの三人は家族だからね、形は大分変だけど。消えるのはこの体だけ。それに伴ってわたし達も消える。それだけだよ」
結局彼女は答えなかった。話に現実味なんてまるでない。それでも信じてしまうのは、目の前に居る彼女の存在のせいだろう。
妙に現実味のある話し方で、話を聞いているとまるで物語の登場人物になったような気持ちになった。まだ軽く頭が混乱しているせいで、あんまり考えられない。
「ま、もうわたしとしては会わないだろうし自己紹介でもしておこうかな。わたしは沙織。元々は作家だった。あと、最後に。“わたし達の近くにいる金髪の男には近づかない方がいい”。アイツに関わるとロクな目に遭わないから」
沙織は、ゆっくりと目を閉じた。次に目を開けたのは、瑠奈。キョトンとしてこちらを見ている。
「えーっと、なんか、あったよね？」
「いや、気にしなくていいぞ。ああ、でも……うーん……言わないほうが、いいと思うから」
「そう？ じゃあ、聞かないでおくね」
金髪の男。そう言われてまず思い浮かべるのは、世宇子中のアフロディー。瑠奈とは恋人同士だ。
俺達がアフロディーに関わって何があったかと聞かれると、去年のFF決勝で対決したことくらいだ。正直、ろくな目にあわないってほど酷いことじゃないと思う。
「瑠奈」
「何？」
「その……アフロディーと、何かあったか？」
瑠奈はキョトンとして、首を傾げて、それから俺をじっと見て、やっぱり首を傾げた。
「……なんもないよ？ もしかして照美から連絡でも来た？」
「あ、そう。連絡は来てないけど、“沙織”って奴が──」
「あの偏屈が？」
いつになく嫌そうな顔をして、食い気味に瑠奈が聞いてくる。それに気圧されて、あっさりと答えてしまった。
「ち、“近くにいる金髪の男には近づかない方がいい”って……」
「え？ ああ……多分それ照美じゃないよ。他に心当たりある」
「あ、そう……」
変な空気になったから、とりあえず新技を見てもらって解散した。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
