world６２ 特異な血筋、異端な少女 ページ16
円堂side
瑠奈は、強い。二年生の途中からやってきて、圧倒的なパワーを見せた、無名の鬼才。最初は言動が何処かズレてて、小学生でも知ってるような事に目を輝かせていて、なんだか不思議な奴だと思った。
それが一変したのは、去年のFFでの地区予選決勝。対帝国戦で、豪炎寺を突き飛ばしたとき。鉄骨が落ちてくる寸前少しポジションを動いたせいで、鉄骨の真下に居ることになってしまったんだろうと言っていた。
ズレていると思った一因は、きっと瑠奈が他人を大切にしすぎるから。知り合った人に、善悪、立場に関わらず接せるから、皆の良いところを知っている。
偏見が無くて、行き過ぎなくらいの博愛主義者。仲間を傷付けた相手と、仲間の間でいつも揺れている。そんなところが人を惹きつけて、周りに人が増えていく。
「……なんでも、ないよ」
そんな、強くて、優しくて、何でもできる瑠奈が。呆然としたような、寂しがるような、曖昧で、こちらが泣きそうになるような顔をしている。
「なんでもないわけ、ないだろ！？ 何があったんだ、それ、治るのか？ 痛くないのか？ なあ、瑠奈……！」
「大丈夫。ほんとに、大丈夫だから……」
「駄目だ！」
こんな状態の瑠奈を、放っておけない。だって、仲間なんだ。このままじゃいなくなってしまう。嫌だ。何でこうなっているのかなんて知らない。それでも、助けたいと思う。
「円堂……お願い、お願いだから、泣かないでよ……」
「だって、瑠奈がいなくなりそうだから！ 話してくれないのが、寂しいから！」
「もー……わかった、話すよ。隠しててごめん。でも、他の皆には内緒にしてね？」
「内容によっては話すからな」
真っ直ぐと瑠奈の目を見据える。一瞬迷子の子供のように揺らいだ視線は、彼女がそっぽを向いたことで外れた。
「……初めからね、決まってたんだ」
くるりと俺に背を向け、瑠奈は話し出す。ゆっくりと、噛み締めるように、けれど淡々と。
「ボクは──わたしは、バケモノの子孫なんだ。人を惹きつけて、争いを生む鬼の子孫。そう言われてる、大きな大きな家の子供。とは言っても、そんな鬼の血なんてもう薄れてると思うけど。血が薄れても、鬼の力か因果か、優秀な子供は生まれてくる。わたしは、その中の一人なんだよ」
「バケモノの、子孫？」
それが、体が透けることとどう関係しているのか。何処かいつもと違う瑠奈は、続けた。
「わたしは、異端なんだ」
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
