world６１ 限界は近い ページ15
瑠奈side
「……なぁ瑠奈、もしかして最近調子悪いか？」
「ん？ あー……去年のFFよりは調子悪いかな。病気も罹ったし、あんまり良くはないよ。あっ、それでも体調は悪くないよ？ ちゃんと寝たし、うん」
「……そっか、ならいいんだけど……なんか、ちょっと胸騒ぎしてさ」
「まあ、オリオン財団なんていうおっきな組織とやり合ってたら、不安にもなるよね。豪炎寺も……鬼道も、居なくなっちゃったし。ボクも誰かがあんなふうに離脱するのは嫌だなぁ」
しんみりとしてしまわない様に気を付けながら話すと、円堂は少しホッとしたようだった。
……上手く、誤魔化せただろうか。それにしても、円堂は勘が鋭い。それに、ボク達をよく見ている。シュート練習中、横から見ていただけで調子の悪さに気付いてしまうんだから。
次は因縁のアルゼンチン戦。前回ボクは居なかったけれど、中継で見た限り、実力差は大きかった。
日本のレベルは、ここまで低かったのか。それは海外を回っている最中にも思った事だ。それをわかってはいたが、対戦によって仲間がボロボロになる姿は見ていて気持ちのいいものではなかった。
まあ、鬼夜叉として私怨は晴らしてきたからスッキリしているけれど。
「あれ、ユズが野坂達と話してる。なんだか珍しい組み合わせだね……？」
「お？ ……ホントだ、何話してんだろ」
次の試合の戦略でも提案しているんだろうか。小さめのホワイトボードを使っているようだから、多分ポジション確認だろう。
「瑠奈は、混ざらなくていいのか？」
「ん……いいや、変なことしてるわけじゃなさそうだし」
「そうか？」
「うん。それより円堂。前言ってた対クラリオの技って出来た？ ずっと気になっててさ」
そう言うと、円堂は一瞬驚いた顔をして、それから焦ったように言った。
「そうだ瑠奈、手伝って！」
今度は此方が驚く番だった。円堂はボクの手を引っ張って外の小さなグラウンドに連れてきた。
「イメージは出来てるんだけど、中々しっくり来なくてさ。瑠奈は一回、クラリオ達を倒しただろ？ だから、一緒に考えて欲しかったんだ」
「……そう、なんだ……」
「嗚呼！ それじゃあ──瑠奈、その
「え？」
正直、油断していた。最近酷くないし大丈夫だろう、って。でも気にしてはいたし、治ったなんて思っていなかった。
「……なんでも、ないよ」
震えて、情けない声しか出せなかった。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
