world５７ 対処は早期に ページ11
瑠奈side
「う、ん⋯⋯」
暖かい人の気配が無くなると同時に、目が覚めた。たしか、ユズに寝かしつけられたんだったか。
年上なのに、年下に寝かしつけられるとはなんとも不甲斐ない。さっさとユニフォームに着替えて、グラウンドに出た。時刻はとうに練習の始まる時間を過ぎている。
「あ、瑠奈！ もう来たのか、まだ寝ててよかったんだぞ？」
「特に理由もないのに練習を休むのを勧めるんじゃないよ、円堂。ボクのこれは日頃の行いが祟った慢性的な睡眠不足。これでもあまり問題は──」
「いや、あるだろ。流石に目の前で倒れられるのは勘弁な」
「倒れないさ。何処で誰に見られているか分からないグラウンドでなんて」
「お前色々と大丈夫か？ 無理してないか？」
無理はしてないし、特に問題もない。いつもの事だ。そう一蹴して、相手を抜く練習を始めた。手は抜けない。最近、意識が朦朧とする時間が増えてきたから。
病気の再発を疑って検査もしてみたけれど、特に以上は見られなかった。医師と一緒に首を捻ったけれど、最近手足が透ける事で説明がついた。
要するに、此処に居ることが出来なくなってきたのだ。元々機械の誤作動でやってきたのだから、帰り方も正規のものではない。長くて、中学の卒業式前までかな。
練習をしながら考える。いつまで居られるのか、そしてあげはとユズはどうなってしまうのか。二人のことは取り敢えず瞳子姉さんに任せれば平気だろう。迷惑をかけてしまうことになるけれど、他に頼れるところがない。
いざとなれば二人が暫く生活できる程度の援助も取り付けようかな。よし、それも契約の内容に含めておこう。
「ボクが居なくなっても、二人がちゃんと生きられるように。万全を期すに越したことはないよね」
ポツリと呟いた言葉は、思いの外震えていた。情けない、ボクは皆を守らないといけないのに、なんてザマだ。
「瑠奈さん、必殺技の練習付き合ってくださいよ」
「ん？ いいよー」
「⋯⋯あまり気負わないで欲しいんですが」
「え？ なんで？」
「瑠奈さん、貴方は今明らかに無茶しています。気付いていないとは言わせませんし、なんなら円堂さんもぼんやりと気づいています。彼、仲間の異変には敏感なので」
「うげっ、大丈夫だよ〜。そんなに心配しなくても、ボクは平気だよ？ でも、いつかボクが居なくなった時のためには備えておいてね」
にこり、その時ボクはちゃんと笑えていたかな。
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年2月3日 21時
