２８話 空回り ページ35
＊
「どうしよう！ 呼んでも全然出てきてくれない、ボクの部屋にも誰の部屋にもいないんだ」
聞けば、一部屋一部屋声をかけて回ったという。けれども薊の姿はなく、更に食堂まで入れ違う訳もなく。
「まあまあ。あんまり心配しないで、きっとただのいたずらよ。ほら、隠れたまま寝ちゃったのかもしれないし」
「っでも」
「心配なら、私たちで探してきますよ。ね！」
「はい。もちろん」
マネージャー三人に言われて、ようやく瑠奈は席に着いた。心配なのは山々だ。しかし実際、薊に付きっきりで探す訳には行かない。それは理解しているのだ。
「いつも一緒ってわけでもないのに、今日は特別なのか？」
「今日が、っていうか……優と一緒に居ないっていうのがまず珍しいんだよね」
言われてみれば。醤油差しを寄せながら風丸は言う。
薊の姿を見る時は、だいたい隣に優がいた。だからそう、瑠奈がというより、優が一緒にいない、という方に珍しさを覚えたのだ。
「だから、何かあったのかと慌てちゃった」
「まあ、確かに。優が一人で居るのもなんか変な感じだしな」
「うん。昨日はちゃんと居たから、あの人には関係ないんだろうけど……どうしても神経質になっちゃうね」
少し眉根を下げて、瑠奈は笑う。依然として心中穏やかでないが、慌てたからと見つかる保障があるわけじゃない。不安を煽るだけになりかねないし、それは彼女としても本意ではない。
「ほんと、どこ行っちゃったんだろ」
「悩んでも見つかるわけじゃないだろ。早く食べないとメシ冷めるぞ」
「それもそっか」
口をつけた味噌汁は、冷たくはない、かと言って温かいというわけでもない程度に冷めていた。温め直そうかとキッチンに視線を向ければ、既に後片付けを始めているマネージャー達が目に入る。
せかせかキビキビと動く彼女達の間には、瑠奈が入っていく隙などなかった。ちくちく刺さる視線を気にしなければ、味や温度などは何でもいい。実にあっさりと彼女は諦めた。
「瑠奈ちゃん、一人で練習できる？ 僕あざみくん探してもいい？」
食事を終えたらしい優が、ヒョコリと机の向かいから顔を出した。
「えっそんな何もできないと思ってる？ いいよ、気にしないで行っておいで」
「ほんと？ ありがとう瑠奈ちゃん、ご飯はちゃんと全部食べるんだよ」
「あっ否定しないんだ……平気だって、自分でよそったんだからちゃんと食べ切るよ」
続く
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海道凛(プロフ) - 星猫さん» コメントありがとうございます。ですが、此処は作品の感想を頂くための場ですので、詳しいお話はボードにお越しいただいてからでもよろしいでしょうか。 (2021年9月9日 19時) (
レス) id: 63a783c275 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - タブレットで操作しています!一緒に合作しませんか? (2021年9月9日 15時) (レス) id: 8c51e3f139 (このIDを非表示/違反報告)
海道凛(プロフ) - 星猫さん» はじめまして。よく見ていたアニメはイナズマイレブンシリーズと終わりのセラフです。一時期ちらりと見たアニメなら沢山ありますが、一部しかわからない作品が多いです。あと、此方は作品のコメント欄ですので、感想以外の質問などはボードにいただけると嬉しいです。 (2021年3月28日 19時) (レス) id: 63a783c275 (このIDを非表示/違反報告)
星猫 - 知ってるアニメは何ですか？ (2021年3月27日 11時) (レス) id: e8084d140d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海道 凛 | 作成日時：2020年8月7日 18時
