帰宅したら家に反社がおりまして。【三途春千夜】

01　自業自得 ページ2

兄である、蘭さんへ一旦視線を向けるのを辞めて、弟の竜胆さんへと視線を向けてみる。

視線が重なるとバツが悪そうにふいっと視線を逸らされてしまった。何となくだが、竜胆さんは巻き込まれた側な気がする。

……女の勘だけど、竜胆さんは兄の蘭さんに振り回されていそうな気がした。まあ、真相は口を割ってもらわない限りは不明なのだけれど。

「一応、理由だけお聞きしてもいいですか？」

冷静に尋ねてみると、待ってましたと言わんばかりに蘭さんが再び困り顔を作りながら口を開いた。

「遊び相手の女が蘭ちゃんの魅力にヤられすぎて色々あり、家特定されちゃった♡」

……もしかしたら、私のように家が燃やされたとか誰かに命を狙われてるかもしれないとかだったら憐憫に思えたのに。

聞くんじゃなかった、と呆れて思わず絶句してしまう。どう考えても自分で蒔いた種だ。それで家に転がりこまれても困りますけど。

「そういうの、なんて言うか知ってます？自業自得って言うんですよ。」

冷たくあしらうと蘭さんはゲラゲラと爆笑して腹を抱えている。私はちっとも笑っていないのだけど。

「くだらねえ理由で俺たちを巻き込むんじゃねえ！早く帰れ！」

春くんが私の後ろまで回ってきてバックハグをしながら灰谷さん達を手でしっしっと追い払うような仕草をする。

「Aちゃん面白いね。俺、好きかも♡」

再び私の前に立って妖艶な微笑みを向けられ、顎を掴まれる。タレ目が特徴的で、妙に色気を纏っている。

確かに、女の人はこの人に手練手管、言葉巧みに迫られたらコロッと落ちてしまう可能性は高いのだろう。

「おい、てめっ……」

「そういう思わせぶりな事するから女性が勘違いするんですよ。」

春くんの言葉を遮って言い切ると、綺麗な顔立ちの彼はぽかん、としている。

今まではそうやって甘い言葉を囁いて困った顔をすれば、女性が助けてくれていたのだろう。

でも、私には春くんがいる。どれだけ甘い言葉を囁かれても靡くことはない。……半端な覚悟で反社である彼と一緒に居たいと決めた訳じゃないのだから。

「Aちゃん手強いなぁ。」

「お前が手ぇ出すのは無理。分かったら早く帰れクソが！」

空気を読んで先程から黙っている竜胆さんに再び目をやると申し訳なさそうにしていた。この騒ぎに巻き込まれている竜胆さんが1番の被害者な気がしてきた。

「今日だけなら泊まってもいいですよ。」

竜胆さんに免じて今日だけ泊めることにする。

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