帰宅したら家が燃えておりまして。【三途春千夜】

07　らしくない。 ページ8

「全裸で入ったら入ったで、お前ギャーギャー喚くだろうが。俺は見られても何でもいいんだよ！」

立ち上がりタオルに手をかけて脱ごうとする彼を立ち上がって必死で止める私である。

「その通りです、私が悪かったので脱がないでください！！」

「……あ、見えてんぞ♡」

気付くのが遅すぎた私は悲鳴にならない叫びを浴室に響かせていた。付き合ってもない人に再び素肌を晒す事になるとは思ってもいなかったのだから。此処にいる以上、あと何回かはこういう羞恥に晒される思いをしなければならないのかと思うと先が思いやられる。

「三途さんのえっち、変態、すけべ。」

急いでお湯にしゃがみ込み、語彙力低下中の私の必死な暴言。吐いてみるけれど、三途さんは面白がってニヤニヤしながら適当に聞き流している様子。

美しい顔からは想像も出来ないくらい、鍛え上げられている上半身。こうしてみると、改めて彼は本当に男性なんだと思い知らされる。それに……よく見ると、胸板に痣があってとても痛そうだ。

「三途さん、それ痛くないですか？」

痣を指さすと、三途さんは自分の胸板に目を落として「ああ」と最初から眼中になかった、と言いたげな反応を示した。

「痛くねえ。」

「そうなんですね。」

「それよりもお前、俺の身体に見惚れてただろ。」

「……見惚れてません。」

見惚れているとはまた違うけれど、見つめていたのは事実だ。その美しい顔に似つかわしくない割れている筋肉がアンバランスだと感じただけ。

「1回くらい抱いてやろうか？」

「けっ……結構ですっ！」

怖い人になったり、こんな破廉恥な事言うような人になったり……キャラがイマイチ掴めなくて私のペースを崩していく。

三途side
からかうのがめちゃくちゃ面白いバカ女。ガードが堅いくせして、焦ると無防備になって自分の裸晒しちまうような天然な奴。

しっかりしてんのか、バカなのかわからねえけど、見てて飽きなかった。……ま、俺が他人に興味持ったのが久々すぎていつ飽きるかもわからねえけど。全ては俺の気まぐれ次第。

でも、暫くは退屈しないで済みそうだから、もう少し楽しませてもらうか。

「1回くらい抱いてやろうか？」

冗談で聞くと、俺に向かってお湯をかけて「結構です！」と顔を真っ赤にして怒っていた。それを指摘すれば、「のぼせただけです」と怒って浴室から出て行ってしまう。

……女1人に楽しんでるなんて、俺らしくねぇなぁ。なんて思いながら、シャワーの蛇口を捻った。

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